バイエルン放送合唱団

バイエルン放送合唱団（正式名称：ドイツ語でChor des Bayerischen Rundfunks）は、ドイツ南部に位置するバイエルン州の州都ミュンヘンを本拠地とする、ドイツ公共放送連盟（ARD）加盟のバイエルン放送協会に所属するプロフェッショナル合唱団です。放送局専属の合唱団としては、ドイツ国内でも有数の歴史を誇ります。

歴史

その起源は、第二次世界大戦終結後の混乱が収まりつつあった1946年5月1日に遡ります。この日、ロベルト・ザイラーによって設立された当団は、戦後のドイツにおける音楽文化復興の一翼を担う存在として産声を上げました。設立当初から放送メディアを通じた活動を主軸とし、ドイツの放送合唱団としては最も古い団体の一つとして位置づけられています。

指揮体制と歴代首席指揮者

当団の指揮体制における最大の特徴は、首席指揮者をバイエルン放送交響楽団の首席指揮者が兼任するという伝統的な形式を取っている点です。これにより、ドイツでも最高峰のオーケストラの一つであるバイエルン放送交響楽団との密接かつ有機的な連携が可能となり、オーケストラ作品における合唱パートの演奏において、その真価を発揮しています。創設以来、当団を率いてきた指揮者には、オイゲン・ヨッフム、ラファエル・クーベリック、サー・コリン・デイヴィス、ロリン・マゼール、マリス・ヤンソンスといった、20世紀後半から21世紀にかけての世界の音楽界を牽引した巨匠たちが名を連ねています。彼らの芸術的なリーダーシップのもと、当団はその表現力とレパートリーを拡大してきました。

活動とレパートリー

バイエルン放送合唱団の活動は、多岐にわたります。放送用の録音、定期演奏会、国内外での客演公演などを通じて、その音楽を広く届けています。レパートリーはバロックから古典派、ロマン派といった伝統的な声楽曲はもちろんのこと、特に現代音楽の分野において精力的な活動を展開している点が特筆されます。設立以来、数多くの現代作品の初演を手がけ、現代作曲家たちの新たな作品の誕生に深く関与してきました。これまでに、カールハインツ・シュトックハウゼン、クシシュトフ・ペンデレツキ、アルヴォ・ペルト、ヴォルフガング・リーム、ギヤ・カンチェリなど、現代音楽史に名を刻む作曲家たちの代表作を演奏し、これらの作品の普及に貢献しています。

また、当団は次世代の音楽家育成にも熱心に取り組んでいます。若手声楽家や指揮者を対象としたワークショップなどを定期的に開催しており、将来の合唱界を担う才能の発掘と育成にも積極的に関与しています。

団員構成と他団体との連携

プロフェッショナル合唱団として、当団には厳選された44名の声楽家が在籍しています。これらの熟練した声楽家たちが、アンサンブルとして高い精度と豊かな表現力を生み出しています。

本拠地であるミュンヘンは、ドイツ有数の音楽都市であり、当団以外にもバイエルン放送交響楽団、ミュンヘン放送管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団といった世界的に著名なオーケストラが活動しています。バイエルン放送合唱団は、これらのミュンヘンの主要オーケストラと密接な連携を保ち、頻繁に共演を行っています。特に、歴代首席指揮者が同じであるバイエルン放送交響楽団との共演は数多く、ラファエル・クーベリック指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の歴史的な録音や、クリスティアン・ティーレマン指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とのブラームス「ドイツ・レクイエム」といった名演は、当団の質の高さを物語っています。こうした共同制作は、ミュンヘンの音楽シーンを豊かにし、ドイツ国内外にその存在感を示しています。

バイエルン放送合唱団は、その長い歴史、著名な指揮者たちとの協働、幅広いレパートリー、そして教育活動への熱意を通じて、ドイツ、そして世界の合唱音楽界において重要な地位を確立しています。

もう一度検索