バウギ

北欧神話において、バウギは霜の巨人で、スットゥングの弟として知られています。彼の名は、詩の蜜酒を巡る物語の中で、重要な役割を果たします。

スットゥングは、父を殺害したフィアラルとガラールから詩の蜜酒を手に入れ、それを秘密の場所に隠していました。この蜜酒は、飲む者に詩の才能を授ける特別なものでした。

『スノッリのエッダ』第二部『詩語法』によれば、全知全能の神オーディンは、この蜜酒を手に入れることを決意します。彼はボルヴェルクと名乗り、変装してバウギの元を訪れました。オーディンは、バウギの9人の奴隷を争わせ、結果的に全員を死なせてしまいます。働き手を失い困り果てたバウギに対し、オーディンは農民として夏の間働くことを申し出ました。

秋になり、労働の報酬として、オーディンはスットゥングが保管している蜜酒の数口分を要求します。バウギはオーディンと共にスットゥングの元へ行き、蜜酒を分けてくれるように頼みますが、スットゥングはこれを拒否しました。そこでバウギは、蜜酒が隠されている山に、ラチという錐を使って穴を開けることにしました。オーディンは蛇に変身し、その穴を通って山の中へ侵入しました。

山の中では、スットゥングの娘であるグンロズが蜜酒を守っていました。オーディンはグンロズを誘惑し、三夜を共に過ごしました。そして、自分に蜜酒を3口分だけ譲ってくれるように彼女を説得し、ついに彼女は承諾しました。しかし、オーディンは約束を破り、蜜酒を全て飲み干してしまったのです。その後、オーディンは鷲に変身し、蜜酒を持って逃げ去りました。

この物語は、オーディンの狡猾さと知恵、そして目的のためには手段を選ばない一面を描いています。また、バウギの立場から見ると、彼はオーディンに利用されたとも言えるでしょう。しかし、彼の協力がなければ、オーディンは蜜酒を手に入れることはできなかったかもしれません。

バウギは、北欧神話の中でも特に有名なキャラクターではありませんが、詩の蜜酒の物語における彼の役割は、物語の展開に不可欠な要素となっています。彼の存在は、オーディンの冒険と知略をより際立たせる役割を果たしていると言えるでしょう。

参考文献
「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」谷口幸男訳、『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。

関連項目
詩の蜜酒

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