バクー・トビリシ・ジェイハンパイプライン

バクー・トビリシ・ジェイハンパイプライン（BTCパイプライン）

バクー・トビリシ・ジェイハンパイプラインは、カスピ海に位置するアゼリ・チラグ・グネシュリ油田からトルコの地中海沿岸にあるジェイハン港までを結ぶ、全長1,768キロメートルの原油パイプラインです。このパイプラインは、アゼルバイジャンの首都バクーから始まり、ジョージアの首都トビリシを経由し、最終的にトルコの港に到達します。BTCパイプラインは、世界で最も重要な石油輸送ルートの一つとされ、ドルジバパイプラインに次ぐ規模を誇ります。

歴史的背景

BTCパイプラインの建設に至る背景には、ソビエト連邦崩壊後の新たなエネルギー輸送ルートの必要性があります。カスピ海域には広大な油田が存在しますが、輸送手段は依然としてロシアが支配する状況でした。1990年代初頭、トルコのスュレイマン・デミレル首相が中央アジア諸国とアゼルバイジャンに対して新たなパイプラインの提案を行い、1993年には正式にアゼルバイジャンとトルコの間で合意が成立しました。

当初、ジョージア経由ではなくアルメニアを通過する計画もありましたが、この選択肢は地域的な対立から不都合と判断され、ジョージアを経由するルートが選ばれました。最終的に1998年、アゼルバイジャン、ジョージア、トルコがBTCパイプラインを支持することを公式に表明しました。

建設と完成

BTCパイプラインの建設は2003年に始まり、2005年に完了しました。アゼルバイジャン部分はギリシャの企業が、ジョージア部分はフランス・アメリカの合弁事業が担当しました。建設の中心にはアメリカのベクテル社がありました。竣工式は何度も行われ、2005年にはアゼルバイジャンから初めて原油が送り出されました。この原油は約1,770キロメートルの距離を経て、翌年にトルコに到達しました。

技術的特徴

BTCパイプラインは、全長のうちアゼルバイジャンが443キロメートル、ジョージアが249キロメートル、トルコが1,076キロメートルを占めます。パイプラインは数多くの地形を越え、最高峰はカフカース山脈の標高2,830メートルです。また、3000以上の交通路や水路を通過します。一般的には毎日100万バレルの原油が運ばれ、全行程を通じて8つのポンプステーションが設けられています。

経済と政治的影響

BTCパイプラインの稼働により、アゼルバイジャンは実質GDPが35％増加したとされ、トルコやジョージアには通過料がもたらされ、地域経済に貢献しました。しかし、西側諸国の介入が地域の不安定化を招くとの懸念も存在します。パイプラインの重要性は、単に経済的な側面にとどまらず、地政学的な側面にも及ぶことから、各国がこのプロジェクトに注目しています。

環境と人権の問題

BTCパイプラインの構築にあたっては、環境への影響や地域住民の権利が問題視されています。自然の豊かな地域を通過する上で、地震や油流出のリスクがあります。また、アゼルバイジャンの人権に対する懸念もあります。こうした問題を踏まえ、適切な対策が求められています。

結論

バクー・トビリシ・ジェイハンパイプラインは、単なるエネルギー輸送の手段にとどまらず、地域の経済、政治、環境、人権に影響を及ぼす重要なインフラです。今後の展開が期待される中、このパイプラインがどのように進化していくのか、広く注目されています。

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