バステト

バステト：古代エジプトの女神

バステトは、古代エジプト神話において非常に重要な地位を占める女神です。彼女の名前は「ブバスティスの女主」を意味し、当初は雌ライオンの頭を持つ神として崇拝されていました。紀元前1000年頃からは、猫や猫の頭を持つ人間の姿へと変わっていきました。特に、人間の姿のバステトが持つシンボルとして、シストラムという楽器や盾、籠などがありました。

バステトは猫の女神であることから、古代エジプトにおいて猫は特別な位置を占めていました。実際、猫は古代エジプト人によって最初に家畜化された動物の一つであり、エジプト先王朝時代にさかのぼる猫の骨が貴族の墓から発見されています。バステトはライオンとしての攻撃的な側面から徐々に穏やかな性格へと変化し、特に家族や繁栄を象徴する神へと進化しました。

神話におけるバステト

神話において、バステトはしばしば太陽神ラーの娘や妹、あるいは妻とされています。彼女は他の女神、特に雌ライオンのテフヌトやセクメト、ハトホルとも関連付けられることが多く、そのために複数の役割を持つことになります。バステトは時にはラーが地上に送った「目」として、また人間を罰する存在とも捉えられました。

さらに、バステトは天空の神としても認識され、人々に病気や悪霊からの守護を提供する女性的な側面を持つようになりました。このように、バステトは創造神プタハの妻とされ、彼女の子供たち、例えばライオンの神マヘスやアヌビスとの関係も描かれていますが、バステト自身には具体的な神話が存在しないことも特筆すべき点です。

信仰の中心

バステトの信仰の中心地は下エジプトのブバスティスであり、彼女を崇拝する人々はこの地で彼女を祭りました。猫はバステトの聖獣とされ、ミイラ化された猫が埋葬されるなど、猫を通じた崇拝が行われていました。ブバスティスの他にも、メンフィスやヘリオポリス、テーベ、レオントポリス、ヘラクレオポリスなどが崇拝地として知られています。

かつては人に対する恐れの象徴であったバステトですが、徐々に「王の乳母」として変わり、王や家庭を守護する女神としての役割を持つようになりました。繁栄や愛欲を象徴し、音楽や踊りを好む存在ともされました。また、バステトは「蛇の首を刎ねる者」として家庭を保護するとも信じられました。

文化的影響

ギリシャ人はバステトをアルテミスやアプロディーテーと比較することが多く、彼女の多面的な性格を強調しました。さらに、バステトはクトゥルフ神話にも登場し、猫たちから信仰されたり、時には残忍な存在として描かれたりします。

このように、バステトは古代エジプトの文化と神話に深く根付いた女神であり、時代を超えて多くの人々に影響を及ぼしてきました。彼女の姿は、古代エジプト人の生活や信仰における重要な要素として今も語り継がれています。

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