バソプレッシン

バソプレッシンについて

バソプレッシンは、ヒトを含む動物に見られる重要なペプチドホルモンで、主に視床下部で合成され、脳下垂体後葉から分泌されます。このホルモンは、抗利尿ホルモンと呼ばれ、水分の再吸収を促進し、利尿を抑制します。また、バソプレッシンは血管を収縮させ血圧を上げる働きも持っています。ヒトにおいては、主にアルギニンバソプレッシンが機能しており、特定の動物種においては異なる形態のバソプレッシンが存在します。

機能と効果

バソプレッシンの主な機能の一つは、腎臓における水分の再吸収を増加させることです。これにより、体液の喪失を防ぎ、脱水症状や血液量の減少時の体の調整を助けます。高用量では、強い血管収縮作用を示し、心肺蘇生や敗血症の治療に用いられることがあります。バソプレッシンの構造は9つのアミノ酸から成り立っており、特にCys-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-Pro-Arg-Glyが結合した形で存在します。

合成と分泌

バソプレッシンは視床下部にある神経細胞で合成されます。このプロセスではプレプロプレッソフィジンという前駆体が作成され、シグナルペプチドが取り除かれた後に脳下垂体後葉でバソプレッシンへと変換され、最終的に血液中に放出されます。

受容体と作用

バソプレッシンの効果は、腎臓の細胞膜に存在するV2受容体を通じて伝わります。この刺激により、細胞内においてアデニル酸シクラーゼが活性化し、ATPがcAMPに変わります。このcAMPはAキナーゼを活性化し、最終的にアクアポリン2が細胞膜に移行することで、水分の再吸収が促進されます。

関連する疾患

バソプレッシンの異常分泌により、様々な疾患が引き起こされることがあります。例えば、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群（SIADH）は、バソプレッシンが異常に分泌されることで低ナトリウム血症を引き起こします。また、尿崩症はバソプレッシンの合成が障害されることにより、多尿などを引き起こす疾患です。治療法としては、中枢性尿崩症に対してバソプレッシンの注射療法や、誘導体であるデスモプレッシンが使用されます。

救急医療における利用

バソプレッシンは、敗血症性ショックの治療において血管収縮薬として用いられることがあります。ノルアドレナリンが効果を示さない場合の第二選択肢としての利用が考慮されます。ただし、心停止時の使用に関しては、現在のガイドラインでは推奨されていません。

動物におけるバソプレッシンの影響

ヒト以外の動物においてもバソプレッシンは重要な機能を果たしています。特にラットを用いた研究では、バソプレッシンが行動に与える影響が示されています。また、ストレスにより幼少期のマウスでバソプレッシンの分泌が促進されることが記録され、長期的に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

バソプレッシンは、多くの生理的役割を持つ重要なホルモンであり、疾患や治療への応用が期待されます。

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