バタクラン (劇場)

バタクラン：パリの歴史と悲劇を刻む劇場

バタクランは、フランスのパリ11区、ヴォルテール大通り50番地に位置する歴史的な劇場です。1864年に建築家シャルル・デュバルによって設計され、ジャック・オッフェンバックのオペレッタ『バタクラン』にちなんで命名されました。1991年にはフランスの歴史的建造物として登録されています。

歴史

元々は「Grand Café Chinois」という、シノワズリ（中国趣味）を取り入れたコンサートカフェとして誕生しました。地上階は広大なダンスホール、地下1階はカフェと劇場を兼ね備えた空間でした。ウジェーヌ・スクリーブなど、当時の著名なヴォードヴィル作家の作品が上演されることで知られていました。

1865年2月3日、アンドレ＝マルタン・パリスの指揮のもと開業。その後、1892年に歌手のパウルスに売却され、所有者は何度も変わりました。1910年には大規模な改修が行われ、レヴュー専門の劇場として再出発。モーリス・シュヴァリエをはじめとするスター俳優たちが舞台に立ち、成功を収めました。

1926年、バタクランは再び売却され、映画館へと姿を変えます。しかし、1933年に火災が発生し、建物の一部が取り壊される事態となりました。1969年に映画館としての営業を終えた後は、多目的ホールとして様々なイベントに利用されるようになります。2006年には、外観が元の色に塗り直されましたが、特徴的だった仏塔風の屋根は取り壊されてしまいました。

2015年9月からは、ラガルデールグループのエンターテインメント部門の傘下となっています。

代表的な公演

バタクランは、海外では1970年代以降、パリのロックシーンにおける「伝説の劇場」として知られています。

日本人のアーティストも数多く公演を行っており、きゃりーぱみゅぱみゅ、Perfume、KOKIA、ONE OK ROCKなどがバタクランのステージに立っています。

2015年パリ同時多発テロ事件

2015年11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件において、バタクランは標的の一つとなりました。アメリカのロックバンド、イーグルス・オブ・デス・メタルのコンサート中に4人のテロリストが乱入し、銃を乱射。観客を人質に立てこもるという痛ましい事件が発生しました。

治安部隊が突入し、テロリストは3人が自爆、1人が射殺され、事件は終結しましたが、89人もの犠牲者が出ました。この事件は世界中に衝撃を与え、バタクランはテロの象徴として記憶されることとなりました。

事件の40年前からバタクランを所有していたユダヤ人兄弟（兄のパスカル・ラルーはUJAマッカビ・パリ・メトロポールのオーナー）は、事件の2か月前に劇場を売却し、一人はイスラエルに移住したばかりでした。彼らによれば、以前から親イスラエル的なイベントを頻繁に開催していたため、劇場は反シオニストグループの攻撃対象になっていたとのことです。

バタクランは、華やかな歴史と悲劇的な事件が交錯する、パリの文化を象徴する場所の一つです。

公式ウェブサイト

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