バチカンのスイス衛兵

バチカンのスイス衛兵について

バチカンのスイス衛兵は、バチカン市国とローマ教皇を護衛する特異な軍隊であり、その歴史は1505年に遡ります。教皇ユリウス2世は、教皇領における常備軍の創設を決定し、スイスの傭兵が選ばれました。スイス傭兵は、当時のヨーロッパの中で卓越した戦闘力を誇っていましたが、現代のスイスでは傭兵が禁止されているため、この部隊は特別な存在として存続しています。

歴史的背景

スイス衛兵の起源は、1506年1月22日に始まりました。教皇は、ポポロ門を通じて150人の傭兵を迎え入れました。その後、スイス衛兵は、ローマ劫掠の際に多くの犠牲を出しながらも、数多くの戦闘に派遣されていきます。特に1571年のレパントの海戦やファマグスタの戦いでは、教皇の軍隊として活躍しました。しかし、フランス革命戦争の影響で彼らは解散に追い込まれることになります。

1860年に教皇領が消滅し、財源が無くなった際にはスイス傭兵が反乱を起こす事態に。ピウス10世のころにはその存続が検討され、最終的にはドイツ系スイス人に限定される形でスイス衛兵が維持されることになりました。彼らの制服は、16世紀のルネサンス風デザインに基づいており、豪華さが際立っています。

現在の役割と任務

今日のスイス衛兵の主な任務は、ローマ教皇の護衛やバチカンを訪れる外国の要人の警護、教皇の居住地の警備などです。武器としては、現代的なSIG P220やSIG SG550といった銃器を使用していますが、伝統的な剣や長斧の訓練も行っています。派手な制服は1914年に制定され、特別な行事ではさらに豪華な装飾が施されます。

さらに、入隊式は毎年5月6日に行われ、スイス衛兵は厳粛な宣誓を行います。今日の採用基準は、スイスのカトリック市民であること、年齢制限や身長条件、中等教育の修了など様々な条件を満たす必要があります。

給与と特権

スイス衛兵の月収は約1500スイスフランと薄給ですが、各種特権が付与されます。例えば、免税や国民健康保険料支払い免除、住居や食費の保証があります。また、在籍中に外国語やITのスキルを学べるため、異国でのキャリア訓練の機会とも捉えられています。需要は志願者の動向により変化しますが、依然として魅力的な職業として認識されています。

現代の技術と装備

近年、スイス衛兵は伝統に加え、現代的な装備の導入にも取り組んでいます。2019年には3Dプリンタによるプラスチック製のヘルメットを導入し、軽量で機能性の高い装備に進化しています。従来の鉄製ヘルメットと比べて製造コストや期間が削減されるだけでなく、紫外線防止機能も備えています。

このように、バチカンのスイス衛兵は伝統的な儀礼的側面と現代的な警備に対応する役割を併せ持つユニークな存在であり、今後もその役割を果たしていくことでしょう。

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