ファマグスタ

ファマグスタは、キプロス島の東部に位置する主要都市であり、その歴史は古代にまで遡ります。ギリシア語ではアモホストス、トルコ語ではガージマーウサとして知られ、キプロスで最も水深のある港を有しています。現在、この都市は北キプロス・トルコ共和国の支配下にあり、過去には様々な支配者の下で重要な役割を果たしてきました。

古代から中世へ

ファマグスタの起源は紀元前300年頃に遡り、当初はアルシノエという漁村でした。その後、サラミスからの撤退に伴い、小さな港町へと発展しました。1192年、キプロス王国が成立すると、ファマグスタは東地中海の重要な港町として急速に発展しました。天然の良港と、町を守る城壁を備えていたため、中東と西ヨーロッパを結ぶ交易の中継地として栄え、人口も増加しました。1291年にアッコンが陥落した後、ファマグスタはオリエントにおけるキリスト教国のなかで最も裕福な都市の一つとなりました。

しかし、その富を狙い、1372年にはジェノヴァ共和国、1489年にはヴェネツィア共和国からの攻撃を受けました。富裕な商人たちは多くの教会を寄進し、その結果、ファマグスタは教会地区としても知られるようになりました。これらの教会は現在でも残っており、その歴史を物語っています。

オスマン帝国とイギリスの支配

1570年から1571年にかけて、ファマグスタはオスマン帝国軍による13ヶ月に及ぶ包囲と砲撃に耐えました。最終的に陥落した後、町はオスマン帝国の一部となり、唯一残った大聖堂はモスク（ラーラ・ムスタファ・パシャ・モスク）へと姿を変えました。1878年のベルリン会議の結果、キプロス島はイギリスの施政権下に入り、ファマグスタもイギリスの支配下となりました。この時代には、トルコ系住民が旧市街に、ギリシャ系住民がヴェロシャ地区に住み分けされていました。第二次世界大戦中には、ホロコーストからの生還者を収容するキャンプが設置され、彼らは後にイギリス領パレスチナに移住しました。

近代と現在のファマグスタ

1960年のキプロス独立から1974年のトルコ軍侵攻まで、ファマグスタは文化と経済の両面で繁栄を享受しました。特に夏季には西欧からの観光客が増加し、町の人口は一時的に10万人近くにまで膨れ上がりました。しかし、1974年8月14日のトルコ軍侵攻により、ヴェロシャ地区は軍によって封鎖され、約2万6500人のギリシャ系住民は町からの脱出を余儀なくされました。その後、彼らの帰還は許されておらず、ヴェロシャ地区はゴーストタウンと化しています。

現在、ファマグスタの人口は3万9千人ほどに回復していますが、これは主にトルコ系住民と、侵攻後にトルコから移住してきた人々によって構成されています。国際連合は、ヴェロシャ地区の行政をキプロス政府から移管し、難民となっているギリシャ系住民の帰還を許可するという案を提唱しましたが、北キプロス・トルコ共和国とトルコはこれを拒否しています。ヴェロシャ地区は、自然に還りつつある廃墟として、今もなお封鎖されたままです。

見どころ

ファマグスタには、歴史的な見どころが数多く残されています。

ローマ遺跡: 古代ローマ時代の浴場や競技場の遺跡が残っています。
聖バルナバ教会: この教会は、キプロスの歴史において重要な役割を果たしてきました。
ファマグスタ港の砦: シェイクスピアの『オセロ』の舞台としても知られるこの砦は、14世紀に建てられたゴシック様式の美しいホールを有しています。
ヴェネツィア宮殿: 1571年のオスマン帝国による侵攻時に破壊された宮殿で、トルコ支配下では刑務所として使用されていました。


ファマグスタは、歴史と文化が交錯する魅力的な都市であり、その複雑な歴史は今日まで続いています。

出身者

* アントニス・トゥマジス - ギリシャ系キプロス人の外交官、大使

ファマグスタは、その豊かな歴史と文化遺産を通じて、訪れる人々に深い印象を与える都市です。

もう一度検索