バッターニー

アル＝バッターニーの生涯と業績

アル＝バッターニー（850年頃 - 929年）は、アッバース朝時代の天文学者・数学者であり、その業績は後の科学に大きな影響を与えました。彼はシリアのハッラーンで生まれ、後にラッカで活動を行い、最終的にはダマスカスで亡くなりました。

バッターニーは、貴族の家系で生まれたという説もありますが、彼の父親が著名な科学機器の職人であったことが知られているものの、彼自身についての詳細な情報はあまり残っていません。彼の名前に含まれる「ムハンマド」からは、彼がムスリムであることが確かですが、同時に「サービー」という通称から、異教徒の共同体との関連が示唆されています。

業績

天文学の分野

バッターニーの主な業績は天文学の分野におけるもので、彼自身の私立天文台をラッカに設置しました。この天文台は、数々の現代的な天文観測機器を備え、41年間にわたって正確な天体観測を行った結果、489個の星の恒星表を作成しました。彼はこの観測を通じて、天文学の多くの重要な発見をしました。

彼の研究の一つは、「一太陽年」が365日5時間46分24秒であるという正確な算出です。この計測は、長い間プトレマイオスによって認識されていた算出結果を訂正するものであり、バッターニーの研究は後のコペルニクスの業績よりも精度が高いとされます。一部の研究者は、彼の位置が南方の緯度に近かったことがこの観測に役立った可能性があると指摘しています。

また、バッターニーは太陽と月の運動に関する詳細な表を作成し、黄道傾斜角の変動なども観察しました。特に、彼は太陽の離心率や春分点の歳差運動など、重要な天文現象を発見し、正弦（サイン）を使った計算法を取り入れたことでも知られています。

バッターニーは、プトレマイオスが記録した近日点および遠日点の方向が変化していることを発見し、これを現在の地動説の枠組みで評価すると、地球の軌道の離心率が変化することを示す結果となりました。

三角法への貢献

彼はまた、三角法の分野においても重要な貢献をしました。正弦法の導入やコタンジェントの計算、さらには球面三角法の定理を発見するなど、三角関数の整理を行い、この分野の基盤を築きました。バッターニーの著作『サービア天文表』は、彼の数理天文学の成果を総括したもので、後の天文学者たちに大きな影響を与えました。

影響と評価

アル＝バッターニーの業績は、西洋中世の天文学者にとって非常に重要であり、コペルニクスを含む多くの後の学者たちによって引用されています。彼の観測や理論は、天文学だけでなく数学の発展にも寄与し、さまざまな分野で後世に長く影響を及ぼしました。

このように、バッターニーはアッバース朝時代の代表的な科学者の一人として、後の科学史において重要な役割を果たした人物です。彼が残した成果は、クレーター名などにもその名をとどめ、多くの学問分野において語り継がれています。

もう一度検索