バッダースリー・クリントン

バッダースリー・クリントン：歴史と伝説が息づくマナー・ハウス

バッダースリー・クリントンは、イングランドのウォリックシャー、ウォリックの街から北西へ約13キロの場所に位置する、歴史的なマナー・ハウスです。13世紀にフォレスト・オブ・アーデンの開拓が進められた頃に堀が築かれ、15世紀初頭には屋敷が建てられました。その歴史的価値から、指定史跡および第1級イギリス指定建造物として保護されています。

バッダースリー・クリントンの来歴

屋敷の名前は、この地を開墾したとされるサクソン人のバエディと、13世紀に堀を築いたデ・クリントン一族に由来すると言われています。1438年には、イングランドの財務補佐官であったジョン・ブロームが荘園ごとこの地を購入。その後、息子のニコラスに譲渡されました。

ニコラスは教区牧師を殺害した罪の償いとして、聖マイケル教会の拡張を行ったと伝えられています。また、屋敷の図書室で牧師を殺害したという伝説も残っていますが、血痕は豚の血であることが判明しており、図書室の木材も後の時代のものであることから、この伝説は事実ではないと考えられています。しかし、ニコラスは生前の罪を悔い、屋敷の玄関の下に埋葬されたと伝えられています。銃眼や跳ね橋などは、この頃に造られたと考えられています。

ニコラスの死後、屋敷は娘へと受け継がれ、娘はウォリックシャーの州長官エドワード・フェラーズと結婚しました。1526年以降、エドワード・フェラーズによって屋敷は拡張され、現在に近い形となりました。

1549年から1633年まで屋敷に住んだヘンリー・フェラーズは、「好古家」として知られ、一族の紋章を表すステンドグラスや木の彫刻を飾るなど、屋敷に様々な改装を加えました。これらのステンドグラスは、現在も屋敷の公開されている部屋に残っています。また、グレート・ホールや庭園もヘンリーによって造られたと考えられています。

1590年頃から、ヘンリーは屋敷をカトリック教徒のために開放し、宗教改革の騒乱から逃れようとする聖職者たちを匿いました。そのため、屋敷内にはいくつかの隠れ場所が設けられています。

18世紀には、グレート・ホールが煉瓦で改修され、東側が拡張されましたが、元の建物のスタイルを維持するため、細心の注意が払われました。

1860年代には、フェラーズ家の親類であった小説家のジョージアナ・チャタトンとその夫エドワード・デリングが屋敷に住むようになり、カトリック礼拝堂が再建されました。1940年代まで内装は大きく変更され、特に礼拝堂の外側の2階部分が完全に改修されました。

19世紀末には、魅力的な田舎の屋敷として知られるようになり、雑誌『カントリー・ライフ』の創刊号では、その古式ゆかしい佇まいが称賛されました。

1940年にバッダースリー・クリントンは売りに出され、ナショナル・トラストに関心を持っていたトマス・ウォーカーが購入。ウォーカー家は名前に「フェラーズ」を加え、息子であるトマス・フェラーズ＝ウォーカーが1970年代に家屋を相続した後、1980年代にナショナル・トラストへ屋敷を移管しました。1982年からは一般公開されています。

1986年には、グラナダテレビが制作した『シャーロック・ホームズの冒険』のエピソード「マスグレーブ家の儀式書」で、バッダースリー・クリントンの外観が使用されました。2016年10月には、BBC Oneの『アンティーク・ロードショー』が撮影されました。

現在、屋敷には大きな幾何学式庭園や池があり、18世紀に遡る農家も多数存在します。屋敷の中には、壮麗なグレート・ホール、パーラー、図書室をはじめとする部屋があり、16世紀の彫刻装飾や家具、そして後の住人が19世紀頃から使っていた装飾品などが展示されています。聖マイケル教会は、屋敷と多くの歴史的共通点がありますが、数百メートルほど小径を行った場所に位置しています。

カトリック教徒の隠れ家

フェラーズ一家は、宗教改革後もカトリック信仰を維持し、聖職者を匿っていました。これは、当時としては謀反と見なされ、死刑に処される可能性のある行為でした。そのため、一家は聖職者を隠すための特別な準備を行っていました。

屋敷には、聖職者を隠すためのプリースト・ホールや、捜査が入った際に逃げられるよう秘密の通路が設けられました。これらの隠れ場所は、イエズス会の平修士ニコラス・オーウェンによって作られたと言われています。オーウェンは、近隣のハーヴィントン・ホールをはじめとする、多くの巧妙な隠れ場所を作ったことで知られています。

幽霊伝説

非常に古い屋敷であるため、19世紀末頃から幽霊が出るとの噂が絶えません。歴史と伝説が織りなすバッダースリー・クリントンは、訪れる人々を魅了し続けています。

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