バットフィッシュ (潜水艦)

バットフィッシュ (SS-310): バラオ級潜水艦の激動の艦歴

命名と就役

アメリカ海軍のバラオ級潜水艦、バットフィッシュ (USS Batfish, SS/AGSS-310) は、その名のとおり、東太平洋に生息するバットレイにちなんで命名されました。当初は「アクーパ」という予定でしたが、1942年9月24日に改名されました。1942年12月27日に起工、1943年5月5日に進水、同年8月21日にウェイン・ルッカー・メリル少佐の指揮下で就役しました。真珠湾に配備され、太平洋戦争における任務に備えました。

激戦の哨戒

バットフィッシュは、1943年から1945年にかけて、計7回の哨戒任務に従事しました。その中には、日本海軍の戦艦大和への接近という、有名なエピソードも含まれています。1944年1月、伊豆諸島南方で大和を含む日本艦隊に遭遇したバットフィッシュでしたが、艦長のメリル少佐の判断により、攻撃は断念されました。この判断には、のちに異議が唱えられることになります。

最初の哨戒では、日本海軍徴用船「日高丸」を撃沈する戦果を挙げましたが、大和攻撃の失敗は乗組員に衝撃を与えました。この一件で、メリル艦長は司令部から意見具申を受けますが、却下されます。その後、メリル艦長は艦長を解任され、ジョン・K・ファイフ少佐が後任となりました。この人事異動は、乗組員の報告が司令部に届き、検討された結果でした。

続く第2、第3の哨戒では、それぞれ日本船舶を撃沈し、戦果を挙げました。第3の哨戒では、長良川丸、神威丸、第五五十鈴川丸の3隻を撃沈しています。

第4の哨戒では、パラオ方面で掃海艇と駆逐艦五月雨を撃沈しました。五月雨は座礁していたため、比較的容易な攻撃目標だったものの、この攻撃はバットフィッシュの攻撃能力の高さを示すものでした。

第5の哨戒では、南シナ海で哨戒活動に従事しましたが、報告された戦果は後になってゼロと判明しました。この哨戒では、熊野、青葉を含む日本艦隊と接触する場面もありました。

潜水艦撃沈と終戦

第6の哨戒では、ルソン島沖で日本海軍潜水艦呂112と呂113を撃沈するという大きな戦果を挙げました。これは、日本軍がフィリピンからパイロットを救出する作戦の最中に行われたものでした。この功績によって、バットフィッシュは殊勲部隊章を受章し、ニミッツ元帥から祝電が送られました。

最後の第7の哨戒では、日本艦船の激減により大きな戦果はありませんでしたが、終戦間近に屋久島の陸上施設へ艦砲射撃を行うなど、最後まで任務に従事しました。終戦は洋上で迎えました。

戦後と保存

終戦後、バットフィッシュは予備役となり、1952年に再就役。訓練任務に従事した後、1969年に退役しました。その後、オクラホマ州マスコギーで記念碑として保存され、一般公開されています。

バットフィッシュの戦功

バットフィッシュは、第二次世界大戦において9隻の敵艦を撃沈し、合計10,658トンの戦果を挙げました。これは、バラオ級潜水艦の中でも非常に高い戦果であり、その活躍はアメリカ海軍の歴史に深く刻まれています。

参考文献

SS-310, USS BATFISH_Part1. Historic Naval Ships Association. https://issuu.com/hnsa/docs/ss-310_batfish_part1
SS-310, USS BATFISH_Part2. Historic Naval Ships Association. https://issuu.com/hnsa/docs/ss-310_batfish_part2
* その他多数の文献、資料

もう一度検索