バッドバンク

バッドバンクとは

バッドバンク（bad bank）とは、金融危機が発生した際に、金融機関が抱える不良債権を買い取るために設立される資産管理会社です。これは、金融機関の健全性を回復させ、金融システム全体の安定化を図ることを目的としています。

具体的には、金融機関が抱える不良債権を、公的資金を用いて買い取ります。これにより、不良債権を抱える金融機関は、健全な資産（グッドバンク）と不良資産（バッドバンク）に分離されます。この分離によって、金融機関は業務の継続と再建に集中できるようになります。

バッドバンク設立の意義

金融機関が抱える不良債権が増加すると、その担保となっている資産が市場に大量に放出され、資産価格が下落します。資産価格の下落は、金融機関の財務状況をさらに悪化させる悪循環を引き起こし、最終的には信用収縮や金融システムの崩壊につながる可能性があります。バッドバンクは、公的資金を用いて不良債権を買い取ることで、市場の回復を促し、金融システムの崩壊を防ぐ役割を果たします。

バッドバンク設立の問題点

バッドバンクの設立は、多くのメリットがある一方で、以下のような問題点も指摘されています。

巨額な不良債権：不良債権の総額が、国家の財政能力を超える規模に達している場合、バッドバンクの設立は国家の債務不履行につながる可能性があります。
国民感情：公的資金による金融機関の救済は、国民から不公平感を招きやすいです。特に、金融機関の経営者が責任を問われないまま、税金で救済されることに反発が生じることがあります。
モラルハザード：民間金融機関のリスクを、国家が負担することになり、モラルハザードを助長する可能性があります。つまり、金融機関がリスクを過度に取るようになる可能性があります。
市場の歪み：公的資金による市場介入は、市場メカニズムを歪める可能性があります。特に、不良債権の買い取り価格が高すぎると、税金の無駄遣いにつながり、国民負担が増加します。
経営責任：公的資金が投入された金融機関の経営者は、国や株主から厳しい経営責任を問われることになります。これは、経営者のモチベーション低下につながる可能性があります。

各国のバッドバンク事例

バッドバンクは、金融危機が発生した多くの国で設立されています。以下に代表的な事例を挙げます。

日本:
整理回収機構（RCC）
産業再生機構（IRC）
韓国:
韓国資産管理公社（KAMCO）
アメリカ:
整理信託公社（RTC）
スウェーデン:
セキュラム
レトリーバ
フィンランド:
アーセナル
マレーシア:
ダナハルタ
フランス:
換金シンジケート団（CDR）
アイルランド:
国家資産管理機構（NAMA）

これらの事例は、バッドバンクが各国の金融システム安定化に貢献してきたことを示しています。

関連事項

金融危機：バッドバンクは、金融危機への対策として設立されます。
預金保険：預金者の保護を目的とする制度です。
国有化：金融機関が経営破綻した場合、政府が一時的に経営権を握ることがあります。

参考資料

* 世界経済の潮流 2003年春 第２章　産業再生−北欧・アジアの経験/内閣府

バッドバンクは、金融危機を乗り越えるための有効な手段の一つですが、その実施には慎重な検討と国民の理解が必要です。

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