バッファローウィング

バッファローウィングは、鶏の手羽肉を用いたイタリア系アメリカ料理の一つです。その名の通り、ニューヨーク州バッファローで誕生したとされており、地元の人々からは単に「チキンウィング」や「ウィング」と呼ばれ親しまれています。最大の特徴は、素揚げにした手羽に、辛味と酸味の強い特製のホットソースをたっぷりと絡める調理法です。伝統的なソースには、カイエンペッパー、酢、そして溶かしバターが使われます。提供される際には、一般的にブルーチーズドレッシングかランチドレッシングが添えられ、セロリやニンジンなどのスティック野菜と一緒に供されるのが定番です。

特徴と調理法

バッファローウィングの要となるソースは、カイエンペッパーや酢、溶かしバターをベースに、様々な調味料や香辛料を加えて作られます。家庭で手軽に楽しむためには、あらかじめ調合された市販のバッファローソースを利用するのが一般的です。市販ソースは辛さのレベルがいくつか用意されており、好みに合わせて選ぶことができます。もちろん、材料を揃えて自作することも可能です。

鶏手羽肉の調理法としては、衣をつけずに大量の熱した油で揚げるディープフライが主流ですが、グリルやフライパンで焼く方法、あるいは衣をつけて揚げる場合もあります。調理が終わった手羽には、ボウルや密閉容器を使ってソースをまんべんなく絡めます。ソースが全体に行き渡ったら、オーブンなどで軽く加熱し、表面を乾燥させることで、よりソースが手羽に馴染み、美味しく仕上がります。

食文化における位置づけ

アメリカ合衆国では、ハンバーガーやフライドチキン、ピザなどと並び、代表的なファーストフードの一つとして広く国民に愛されています。多くのレストランやスポーツバーの定番メニューとなっています。一方、日本ではアメリカほど日常的な食事として定着しているとは言えませんが、そのピリッとした辛さから、ビールなどのお酒との相性が抜群の酒の肴として受け入れられています。日本の居酒屋などでも見かける機会が増えてきました。

広がりと派生料理

バッファローウィングの distinctive なソースの風味は、様々な料理や商品のインスピレーションとなっています。鶏肉料理以外にも、エビやピザ、さらにはポテトチップスなど、バッファローウィングのソースを使用した料理や商品に「バッファロー - 」という名称が用いられることがあります。特にポテトチップスでは、伝統的な付け合わせであるブルーチーズドレッシングの風味を組み合わせたものも販売されており、バッファローウィングを食べる際の感覚を再現しようとしています。また、その人気を背景に、アメリカ各地ではバッファローウィングの大食いコンテストも開催されています。

発祥を巡る物語

バッファローウィングがどのように誕生したかについては、いくつかの説が語られています。最も有名なのは、バッファローのアンカーバーというレストランを経営していたフランク・ベリッシモ氏の妻、テレサ・ベリッシモ氏が考案したという説です。この説では、ある夜遅く大学から帰ってきた息子とその友人たちに、急いで何か食べさせるため、本来スープ用にするはずだった鶏手羽を揚げて、辛いソースで和えて出したのが始まりとされています。他にも、カトリックの習慣で金曜日に肉食を避ける人々のためにテレサ氏が特別に考案したという説や、夫フランク氏がスパゲッティソース用に注文した鶏の背中と首の代わりに誤って手羽が届き、これをどうにかして使えないかとテレサ氏に頼んだことがきっかけになったという説もあります。

アンカーバー説とは別に、ジョン・ヤング氏が1960年代半ばにバッファローで営んでいたレストランで、既に「マンボソース」と呼ばれる赤いソースを絡めた鶏手羽料理を提供していたとする説も存在します。ヤング氏は1970年にバッファローを離れましたが、彼の店「John Young's Wings 'n Things」は郡裁判所に登録されていました。

全米への普及

バッファローウィングがアメリカ全土に知られるようになったのは、いくつかの要因が重なった結果です。1980年代にテレサ・ベリッシモ氏がNBCのテレビ番組『トゥデイ』に出演し、バッファローウィングを調理したことが広く認知されるきっかけとなりました。また、フライドチキンに比べて短時間で調理できるという利便性から、1970年代以降、その需要が高まっていきました。さらに、1990年から1993年にかけて、地元のプロフットボールチームであるバッファロー・ビルズがスーパーボウルに4年連続で出場したことで、「バッファロー」という地名が注目され、同時にバッファローウィングの人気も全国的に高まりました。現在では、スーパーボウルなどのスポーツ観戦時には欠かせない、ビールのお供の定番料理として親しまれています。

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