セロリ

セロリ：歴史、特徴、栄養価、そして利用法

セロリ (学名: Apium graveolens var. dulce) は、セリ科の一年草または二年草で、ヨーロッパや地中海沿岸地方が原産とされています。独特の強い香りを持つことで知られ、葉、茎、そして実と、植物体の様々な部位を食用として利用できる野菜です。

名称の由来

日本では「セロリ」として広く知られていますが、これは英語名celeryからの外来語です。さらに遡ると、古代ギリシア語のselinon（当初はパセリを指していた）に由来し、その後、中世ギリシア語、ラテン語、イタリア語、フランス語を経て現在の英語名に至ります。和名には「オランダミツバ」という名称もあり、西洋種がオランダ船で日本に伝わったことに由来します。学名 Apium graveolens のgraveolensは「強い匂いの」、dulceは「甘い香りの」という意味を持つラテン語です。

セロリの概要

セロリは淡色野菜に分類され、茎の高さは約30～75cmに成長します。6～9月頃には白い小花を球状に咲かせます。特徴的な香りは、フタリド類とテルペン類化合物に由来します。栄養価も高く、β-カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2などのビタミン類、カルシウム、鉄などのミネラル、そして食物繊維を豊富に含んでいます。

歴史と品種

セロリの原産地については、ヨーロッパから地中海沿岸地方説、ヨーロッパから西南アジア、インド説など諸説あります。古代ローマやギリシャ時代には、香料や薬草として珍重され、食用というよりは男性の強精薬や整腸剤として利用されていました。日本には16世紀末頃に中国を経由して伝来し、本格的な食用としての普及は昭和30年代以降です。現在日本で広く栽培・流通しているのは、西洋種のコーネル系統です。

セロリの品種は大きく分けて黄色品種、緑色品種、中間品種、東洋在来種などに分類されます。欧米では緑色品種が主流ですが、日本では中間品種が中心となっています。代表的な品種として、クセが少ないコーネル、香りが穏やかな新コーネル619号、光沢のある葉柄が特徴のイエローキングセロリーなどがあります。東洋在来種であるキンサイ（チャイニーズセロリ）は、中国料理によく用いられます。

栽培方法

セロリの栽培は、温暖な気候を好みます。栽培適温は15～20℃、発芽適温も15～20℃です。高温や乾燥、寒さには弱いため、夏場の栽培には注意が必要です。土壌は肥沃で水はけの良いものを好み、pH6.0～6.5が適しています。連作障害を起こしやすいので、輪作を心掛けましょう。苗作りから収穫まで4～5ヶ月を要します。有機栽培も可能です。

栽培においては、肥料を多く必要とします。乾燥を防ぐためにマルチングを行い、約30～40cmの間隔で苗を植え付けます。生育期には水切れを起こさないよう注意し、2週間に1回程度の追肥を行います。茎を白く柔らかく育てる軟白栽培も行われます。病虫害としては、アブラムシやキアゲハの幼虫、軟腐病、斑点病などに注意が必要です。

生産と流通

日本ではアメリカ産の品種を元に栽培されたものが主流です。輸入品は検疫の関係で葉の上部が切り落とされるため、国産品との区別が容易です。主な生産地は長野県、静岡県、愛知県、北海道などです。

セロリの利用法

セロリは独特の香りやシャキシャキとした食感が特徴で、生食や料理への利用が可能です。葉と茎はサラダ、漬物、佃煮、スープ、シチューなど様々な料理に使われ、肉料理の臭み消しにも効果を発揮します。キンサイは炒め物にも適しています。セロリの種はセロリシードと呼ばれ、ピクルスやスープなどに用いられます。セロリシードと食塩を混ぜたものはセロリソルトと呼ばれ、香辛料として使われます。保存する際には、茎と葉を切り離して冷蔵保存することが大切です。

栄養価と薬効

セロリは、β-カロテン、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、食物繊維などを豊富に含んでいます。葉の方が茎よりも栄養価が高く、特にβ-カロテンは茎の2倍含まれています。特有の香り成分はアピオールやセダノライドで、食欲増進効果や精神安定効果が期待されています。

薬効としては、胃潰瘍の予防や緩和、神経系の調整、利尿作用、血圧降下作用などがあるとされています。中国では、高血圧症、めまい、頭痛などの症状に用いられています。また、ビタミンUは胃腸粘膜の修復を助ける効果があると言われています。セロリの葉を乾燥させたものを入浴剤として利用するのも良いでしょう。

その他

セロリの種を炒ったものや油は食べられますが、妊婦は大量摂取を避けるべきです。保存状態が悪いと、皮膚炎を引き起こす可能性のあるソラレンが生成される場合があります。古代ギリシャでは、競技会の優勝者にセロリで作った葉冠が授与されていました。

参考文献

いくつかの参考文献（上記に記載されているもの）をここにリストアップする。

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