バドル作戦 (第四次中東戦争)

バドル作戦

バドル作戦（バドルさくせん）は、1973年10月6日に起こったエジプトの軍事作戦で、イスラエルの防衛ラインである「バー＝レブ線」を攻撃するものです。この作戦は、シリアの進軍と同時に実施され、第四次中東戦争、通称10月戦争またはヨム・キプール戦争の幕開けを告げるものでした。

背景

1967年の第三次中東戦争において、イスラエルはシナイ半島の大部分を占拠しました。これに対してエジプトの新たな大統領アンワル・サダトは、敗北の屈辱を晴らすことを使命に、軍事的な再建を進めました。サダトは、国際的な場で戦争を回避するための外交的努力を試みつつ、軍事的な行動を準備しました。

1971年から1973年にかけて、サダトは数度にわたりソビエト連邦と交渉を持ち、エジプト軍の再建を進めました。その間に、エジプト軍には新しい戦略が模索され、特に橋を渡る有限戦争のプランが策定されました。この計画は「バドル作戦」として知られるようになります。

作戦の準備

バドル作戦に向けての準備は周到でした。エジプト軍は、運河を渡るための工兵隊の訓練や演習を繰り返し行い、運河の砂壁に大きな通路を開くための設備を整えました。その中で、揚水機を用いて砂を除去する手法が革新されました。この効果的な技術により、短時間で通路を開設することが可能となり、エジプト軍の作戦成功が期待されました。

攻撃の発動

バドル作戦は、1973年10月6日14時にスタートしました。作戦の第一段階では、エジプト軍はスエズ運河を渡るべく一斉に進軍しました。エジプトの飛行機と砲兵による激しい前奏の後、4,000名の歩兵が運河を渡ってバー＝レブ線に突入しました。いくつもの橋頭堡が設置され、エジプト軍は迅速に地を占拠しました。

作戦が開始されると、イスラエル側は不意打ちを受け、エジプト軍は順調に前進を続けました。エジプト軍は東岸で各橋頭堡を拡大し、続々と約3万人以上の兵士が渡河しました。エジプト軍はイスラエル側の防衛体制を崩し、運河の東岸で占拠地を確保しました。

結果と影響

バドル作戦の成功により、エジプト軍はイスラエル軍に対する大きな戦略的優位を獲得しました。この作戦は、戦後の国際情勢にも大きな影響を及ぼし、アメリカとソビエト連邦の介入を招く要因となりました。サダトはこの成功を自国の国際的地位を強化する足がかりとして活用し、和平交渉に向けた動きを加速させることになります。

戦後、サダトの外交が実を結び、1979年にはエジプト・イスラエル平和条約に至る道筋が整いました。バドル作戦はエジプトにとって長年の屈辱を晴らすだけでなく、平和的な解決への第一歩ともなったのです。

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