ババジャニアン (小惑星)

小惑星ババジャニアン (9017 Babadzhanyan)

小惑星ババジャニアンは、太陽系において火星と木星の軌道の間に広がる「小惑星帯」と呼ばれる領域に位置する天体です。公式には「(9017) Babadzhanyan」として登録されており、数多くの小惑星がひしめくこの領域の中でも、識別番号9017番を与えられた特定の天体を示します。

この小惑星の発見は、1986年に行われました。発見者は、ソビエト連邦（当時）の著名な女性天文学者、リュドミーラ・イワノヴナ・ジュラヴリョーワ（Lyudmila Ivanovna Zhuravlyova）氏です。彼女は、クリミア半島のバフチサライ近郊に位置するクリミア天体物理天文台（CrAO: Crimean Astrophysical Observatory）にて、天体観測データの中からこの未確認天体を見つけ出しました。クリミア天体物理天文台は、小惑星や彗星の探査において長い歴史と実績を持つ研究機関であり、ジュラヴリョーワ氏自身も多くの小惑星を発見しています。

発見された小惑星は、その後の軌道計算と確認観測を経て、確定した天体として国際天文学連合（IAU）に登録されます。そして、発見者などからの提案に基づいて、その天体に固有の名前が与えられます。「ババジャニアン」という名称は、この天体が登録された後、命名規程に従って正式に決定されたものです。

この小惑星の名前の由来は、アルメニアの著名な芸術家、アルノ・ババジャニアン（Arno Babadzhanyan、1921年 - 1983年）氏です。彼は、20世紀のアルメニアを代表する作曲家であり、卓越したピアニストでもありました。彼の音楽は、アルメニアの豊かな民族音楽の伝統と、クラシック音楽、さらにはジャズのエッセンスを融合させた独自の世界観を持ち、多くの人々に愛されました。ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲といった大作から、歌曲、映画音楽、そして後に有名になったピアノ小品に至るまで、非常に幅広いジャンルで活躍しました。ソ連時代においては、国民的な作曲家として広く知られ、その功績は高く評価されています。小惑星に彼の名が冠されたのは、彼の音楽的・文化的貢献に対する敬意と、その名を永く宇宙に刻み留めようとする願いが込められていると考えられます。

小惑星ババジャニアンは、他の多くの小惑星と同様に、太陽の周りを公転しています。その軌道は楕円形であり、周期や軌道傾斜角などの要素によって特徴づけられます。これらの詳細な軌道要素は、継続的な観測データに基づいて計算され、公開されています。

この小惑星は、整理番号9017番として、「小惑星の一覧 (9001-10000)」に含まれる一つです。これは、発見・登録された順に概ね付与される番号であり、その存在が公式に認められている証です。小惑星の一覧は、天文学者が研究を進める上で非常に重要なカタログとなっています。

さらに専門的な情報、例えば小惑星ババジャニアンの精密な軌道データや物理的特性に関する既知の情報などは、アメリカ航空宇宙局（NASA）のジェット推進研究所（JPL）が提供するデータベースなどで公開されています。これらの外部リンクは、天文学者だけでなく、興味を持つ一般の人々にとっても、この小惑星に関する詳細を深く知るための貴重な情報源となります。

このように、小惑星ババジャニアン (9017 Babadzhanyan) は、一人の天文学者の発見の努力と、一人の偉大な芸術家の功績とが宇宙空間で結びついた、興味深い天体と言えるでしょう。その名は、アルノ・ババジャニアン氏の音楽がそうであるように、永く宇宙の歴史に刻み続けられることでしょう。

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