ババール・カルサ

ババール・カルサ（Babbar Khalsa、またはババール・カルサ・インターナショナル、BKIとも呼称される）は、インド北部パンジャーブ地方に、シク教徒による独立国家「ハリスタン」を樹立することを究極の目標として掲げる武装組織です。その活動においては、目標達成のため、武力を用いた攻撃、殺害、爆破といった手段に依存しており、この性質から世界各国の政府によってテロ組織として公式に指定されています。組織の活動範囲は、インド国内にとどまらず、北米やヨーロッパといった海外にも広がっています。

この組織は、1978年に結成されました。設立の背景には、当時のシク教内部の主流派とニランカーリー派との間に発生した衝突があります。この衝突は、その後のパンジャーブ地方におけるシク教徒の武装運動が高まるきっかけの一つとなり、ババール・カルサもこの動きの中で台頭しました。

1980年代に入ると、ババール・カルサはパンジャーブ地方での武装反乱において中心的な役割を担うようになります。彼らの活動は次第に過激化し、特に国際的な注目を集めたのが1985年6月に発生した一連の事件です。最も悪名高いのは、カナダ史上最悪の大量殺害事件とされるエア・インディア182便爆破事件です。アイルランド沖で発生したこの事件では、民間人329人が犠牲となり、その大半がカナダ国民でした。

同日には、日本の成田国際空港においても、別のエア・インディア機を標的とした同様の大量殺戮を目的とした爆弾テロが計画されていましたが、これは爆発物の早期爆発により未遂に終わりました。これらの事件により、ババール・カルサは国際社会にその存在を知らしめ、テロ組織としての悪評を確立することになります。

1990年代に入ると、組織の活動は以前ほどの勢いを失います。これは、インドの警察当局による厳格な取り締まりにより、組織の主要な指導者や幹部が多数死亡または逮捕されたことが大きな要因でした。組織構造が弱体化したことで、パンジャーブにおける武装闘争への影響力は低下していきました。

現在、ババール・カルサは国際社会において危険な組織として広く認識されています。アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、欧州連合（EU）、日本、マレーシア、インドといった多くの国や地域において、テロ組織として正式に指定され、その活動が禁止されています。この指定は、過去の重大なテロ行為の実績と、将来的な脅威となりうる可能性に基づいています。

ババール・カルサの歴史は、特定の政治的目的のために武力行使を選んだ組織が、いかにして国際的なテロ組織とみなされ、悲劇的な事件を引き起こすに至ったかを示しています。彼らの目標である独立国家「ハリスタン」は未だ実現しておらず、組織は弱体化したものの、国際的な監視下に置かれ続けています。その存在は、パンジャーブ地方の歴史だけでなく、国際的なテロリズム対策の文脈においても重要な事例として語られています。

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