シク教

シク教とは

シク教（シクきょう、パンジャーブ語: ਸਿੱਖੀ Sikkhī）は、15世紀末にインドのグル・ナーナクによって創始された宗教です。スィク教、シーク教などとも呼ばれ、信徒は「シク」（弟子）という言葉から派生しています。この宗教の教えを広めるため、教徒はグル・ナーナクの弟子であることを誇りに思っています。シク教の総本山は、パンジャーブ州アムリトサルに位置するハリマンディル（ゴールデン・テンプル、黄金寺院）であり、周囲には寄進者の名が刻まれた大理石の板が敷かれています。経典は『グル・グラント・サーヒブ』と呼ばれる1430ページから成り、英語訳が存在し、インターネットでも入手可能です。

教義の特徴

シク教の教義は、グル・ナーナクが遺した『グル・グラント・サーヒブ』に基づいています。この中には、真の宗教は儀式や形式への執着を超えたものであるという考え方が示されています。また、「イク・オンアカール」（神は一つである）というメッセージを通じて、神の不可分性を強調しています。他の宗教と同じように、シク教は多様な宗教的表現を容認し、他宗教を排斥しない姿勢を取ります。ナーナクはヒンドゥー教やイスラム教の形式的な儀式、慣行について批判をしつつも、聖典に基づく教えへの帰還を促しています。

シク教徒は日常生活の中で神の存在を意識し、世俗の職業に従事することを重要視します。儀式や偶像崇拝は否定され、苦行やカースト制度の考え方も拒否されています。食事に関しても、寺院では菜食主義が尊重され、肉食は信徒の自由とされています。最終的な教義の目標は、神との合一を目指すムクティ（解放）の達成にあります。ムクティが得られるかどうかは、他者への奉仕やグルの恩恵によるもので、個人の性やカーストには関係ありません。

歴史的背景

シク教の歴史は、ナーナクの啓示から始まり、グルたちによって継承されてきました。16世紀初頭、グル・ナーナクはインド北部で教えを広め、後に彼の弟子たちがその教えを発展させました。特に第5代グル・アルジュンの時代に、アムリトサルに黄金寺院が建設され、教団の基盤が強化されました。しかし、当時のムガル帝国との対立が激化し、教団が迫害を受ける時代もありました。シク教団は独自の軍事組織を築き、独立した姿勢を見せました。

現在のシク教徒

シク教は世界で5番目に信者の多い宗教であり、約2400万人の信者がいます。多くの教徒がインドに居住していますが、海外への移住も活発で、アメリカやイギリス、東南アジアにコミュニティも存在しています。日本にもシク教徒のコミュニティがあり、大都市を中心に活動しています。特にパンジャーブ州はシク教徒の数が多く、州全人口の約60%を占めるなど、多数派の宗教集団です。

シク教寺院は「グルドワーラー」と呼ばれ、信徒は寺院に入る際に靴を脱ぎ、頭をターバンや布で覆う必要があります。礼拝の最後には、伝統的なシク教の食事であるランガルが振る舞われます。この食事は無料で提供され、全ての信徒が平等に食べることができます。シク教徒の名前には、男性はシン（Singh）、女性はカウル（Kaur）が一般的です。

著名な歴代グル

シク教には10人の歴代グルが存在し、1代目のグル・ナーナクから始まり、10代目のグル・ゴービンド・シングまでの教えが、現在も信徒に引き継がれています。特に第10代は、教団の組織や制度を再編し、経典『グル・グラント・サーヒブ』を中心に据えたことが特徴的です。

シク教は、その独自の教義や歴史を持ちながら、国境を越えた信仰の広がりを見せています。未来の平和と共存を求めつつ、教義の普及を続けていくことでしょう。

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