バライチゴ

バライチゴ：日本の山野に咲く希少なイチゴ

バライチゴ（学名：Rubus illecebrosus Focke）は、バラ科キイチゴ属に属する落葉低木です。別名「ミヤマイチゴ」とも呼ばれ、その名の通り、バラの花のような美しい花と、甘酸っぱい赤い実が特徴です。鋭い棘を持つ茎葉も、この植物を特徴づける要素となっています。

形態

草のように見える低木で、地下茎を伸ばして繁殖します。茎は直立し、高さは20～45cmほどです。茎にはカギ状の棘がまばらに生えています。葉は奇数羽状複葉で、2～3対の小葉から構成されます。小葉は長さ3～8cmの披針形をしており、先端は尖り、縁には重鋸歯があります。葉の質は薄く、側脈が平行に多数走っているのが特徴です。葉の裏面はほぼ無毛で、葉軸には鎌形の棘があります。

花は直径約4cmの白い花で、長い花柄の先端に下向きに咲きます。花弁は5枚、萼片は先が尾状に伸び、縁と内側に白い短い毛が密生しています。花期は6～7月です。果実は集合果の核果で、長さ約1.5cmの広楕円形をしています。秋に赤く熟し、甘酸っぱい味が楽しめます。

分布と生育環境

バライチゴは、日本の固有種です。本州（関東地方南部以西）、四国、九州の冷温帯に分布し、山地の林縁や草地に生育しています。しばしば群生することもあります。生育環境としては、日当たりがよく、やや湿った場所を好みます。

保全状況

バライチゴは、生育地の減少や環境変化などにより、個体数が減少傾向にあります。そのため、いくつかの都道府県でレッドリストに掲載され、絶滅危惧種として保護されています。例えば、千葉県では重要保護生物（B）、京都府では絶滅危惧種、鹿児島県では準絶滅危惧種に指定されています。また、石川県医王山県立自然公園では、特別地域内での採取や損傷が許可制となっています。バライチゴの変種であるヤクシマバライチゴ（Rubus illecebrosus Focke var. yakusimensis）も、鹿児島県で絶滅危惧II類に指定されています。

利用と文化

バライチゴの実は食用となり、ジャムやジュースなどに加工して利用されます。ただし、個体数が減少しているため、むやみに採取することは避け、観察を楽しむにとどめるべきです。

まとめ

バライチゴは、美しい花と実をつける日本の固有種ですが、絶滅危惧種に指定されている地域もあり、その保全が重要な課題となっています。私たち一人ひとりが、この希少な植物の生育環境を守る意識を持つことが大切です。今後の研究や保全活動によって、バライチゴの生育状況の改善が期待されます。

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