バリー (犬)

バリー：伝説の山岳救助犬

バリー（1800年 - 1814年）は、スイスのサン・ベルナール修道院で使役されていた山岳救助犬で、現在のセント・バーナードの祖先にあたります。その生涯で40人以上の人命を救助し、最も有名なセント・バーナードとして知られています。

歴史

グラン・サン・ベルナール峠に位置するサン・ベルナール修道院では、1707年の記録に初めて犬が登場します。1660年から1670年頃には番犬として飼育されていたと考えられています。バリーが生まれた1800年には、山岳救助犬として特別な犬が使役されており、一般的には牛飼いの犬と呼ばれていました。

現在のセント・バーナードと比較すると、バリーは小型でした。セント・バーナードの体重が65キログラムから85キログラムであるのに対し、バリーの体重は40キログラムから45キログラムと推定されています。バリーは40人以上の人命を救助したとされており、凍てつく洞窟で凍死寸前だった少年を救助したエピソードは特に有名です。

バリーの死

バリーは遭難者を救助中にオオカミと間違えられて殺されたという噂がありますが、これは事実ではありません。バリーは救助犬を引退後、ベルンで余生を送り、14歳で亡くなりました。その後、ベルン自然史博物館に引き取られ、剥製として保存されています。

シムティエール・デ・シヤンの記念碑には、「バリーは40人の命を救ったが、41人目を救助している最中に絶命した」という銘が刻まれています。これはバリーが遭難した兵士を救助しようとした際、兵士にオオカミと間違えられて銃剣で刺されたという物語に基づいています。しかし、これは事実ではなく、バリーは老衰で亡くなっています。

後世への影響

サン・ベルナール修道院では、バリーを記念して必ず一頭のセント・バーナードに「バリー」という名前をつけています。バリーが活躍していた時代には、犬種として確立した名前がなく、アルペン・マスチフやアルペン・スパニエルなどと呼ばれていました。1865年に初めてセント・バーナードという名称が与えられ、1880年にスイスのケネルクラブが公認しました。

ベルン自然史博物館に収蔵されているバリーの剥製は、1923年に修復され、頭部の形が当時のセント・バーナードに合わせて修正されました。また、エドウィン・ランドシーアの絵画に描かれた首輪に吊り下げられた小さな樽が追加されましたが、後に取り除かれ、再び追加されています。

バリーはサミュエル・ロジャースの詩やアンリ・ボルドーの小説など、多くの文学作品に登場しています。ウォルト・ディズニー・カンパニーがテレビ番組を制作したり、少年少女向けのシリーズが出版されたりするなど、バリーの物語は広く親しまれています。

2004年にはサン・ベルナール修道院バリー財団が設立され、修道院が中心となってセント・バーナードの繁殖を管理しています。マルティニにはドッグ・ミュージアムが建てられ、バリーの剥製が貸与されました。

東京消防庁の特別救助隊や消防救助機動部隊では、バリーが描かれたワッペンを使用しています。

バリーは、その勇敢な行動と人命救助の功績により、世界中で愛される存在となっています。

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