バルコ・スキャンダル

バルコ・スキャンダルの概要

バルコ・スキャンダルとは、2003年夏にカリフォルニアの栄養補助食品会社であるバルコ（BALCO）が、アスリートに対して検査で検出されない運動能力向上薬物を供給していた疑惑が発覚した事件を指します。この問題は、陸上競技のみならず、野球やボクシングなど、さまざまな競技に波及し、多くのアスリートが不正な手段を用いている事実が明るみに出ました。

経緯

バルコは1984年にビクター・コンテによって設立され、1988年から2002年の間に運動能力向上薬物をアスリートに提供していました。コンテの証言によれば、陸上選手やNFL選手、メジャーリーグ選手ら合計27名が、禁止薬物を使用していたとされています。著名な選手には、陸上のマリオン・ジョーンズやMLBのバリー・ボンズが含まれていました。

2003年夏、全米反ドーピング機関（USADA）に匿名の人物から注射器が送られ、その中に入っていた物質が新たに発見されたアナボリックステロイド「テトラヒドロゲストリノン」（THG）であることが確認されました。その後の調査により、バルコが薬物供給の元であることが明らかにされたのです。さらに、THGは米食品医薬品局（FDA）によって違法薬物として指定され、健康に危害を及ぼすと警告されました。

秋には連邦大陪審がバルコ社の脱税疑惑について調査を開始し、多くのアスリートが証言をしました。そして2005年、コンテに懲役と保護観察の判決が下され、彼は禁止薬物の取引と資金洗浄を認めました。

陸上競技への影響

サンフランシスコ・クロニクル紙が報じたところによれば、ティム・モンゴメリが連邦大陪審でTHGやHGHの使用を認めており、彼の証言を基にモンゴメリの記録は全て抹消されました。モンゴメリの妻であるジョーンズも、最初はバルコとの関与を否定していましたが、最終的には証拠が揃い、三つの金メダルと二つの銅メダルを剥奪される結果となりました。彼女はその後、偽証の罪で禁錮6か月の判決を受け、刑務所に服役しました。

この一連のスキャンダルは、コーチングスタッフや運営側にも波紋を広げ、コーチのトレバー・グラハムも関与したとして処分を受けました。

野球への影響

MLBにおいては、ジェイソン・ジアンビがバルコとの関わりを認めた他、バリー・ボンズが脱税とも関係していたとして捜査が進みました。多くの選手が、使用した薬物について「知らなかった」との主張をしましたが、アンダーソンの証言やその他の証拠から、薬物使用の疑いは拡大しました。

2005年にはMLBの新しいドーピング規制が施行され、選手に対する検査が厳格化されました。ボンズに関しても、複数回にわたってドーピングに関する法的な問題が生じ、無罪を主張し続けましたが、結局は公判で司法妨害の罪で有罪判決を受けました。

ボクシングへの影響

ボクサーのシェーン・モズリーもこの事件に名を連ねることとなり、後にバルコからの薬物供給を認めました。モズリーはコーチから渡された薬物が運動能力向上薬物だとは知らず使用していたと主張しましたが、最終的な結論として彼がその内容を理解していたかは疑問視されました。

結語

バルコ・スキャンダルは、アメリカのスポーツ界におけるドーピング問題の象徴的な事件であり、競技の信頼性を大きく揺るがせました。その結果、各競技団体の規制が強化され、アスリートのコンプライアンス意識にも変化がもたらされました。このスキャンダルは、運動能力向上薬物の使用がただの個人の問題ではなく、スポーツ全体に及ぼす影響の大きさを示す重要な事例となりました。

もう一度検索