バルザーン・イブラーヒーム・ハサン

バルザーン・イブラーヒーム・アル＝ハサン・アッ＝ティクリーティーの生涯

バルザーン・イブラーヒーム・アル＝ハサン・アッ＝ティクリーティー（1951年2月17日 - 2007年1月15日）は、イラクの注目すべき政治家であり、サッダーム・フセインの異父弟として知られています。彼の生涯は、権力、裏切り、そして最終的な絶望の物語であり、イラクの政治史における重要な存在でした。

生い立ちと政治的台頭

バルザーンは1951年、イラクのティクリートで誕生します。彼は17歳の時、異父兄のサッダームと共にバアス党のクーデターに参加し、政権の中心へと駆け上がっていくことになります。大学では法学と政治学を学び、1977年にはイラクの情報機関である情報総局の長官に指名され、彼の政治的キャリアが本格化しました。

権力の絶頂と陰謀

1979年にサッダームが大統領に就任すると、バルザーンはバアス党内の大粛清に積極的に関与し、自身の権力を強化します。この時期、彼は多くの同志を粛清の対象としており、その中には彼の個人的な対立者も含まれていました。特に、1983年には、保健相で政権に対立していたリヤード・イブラーヒームを射殺してしまいます。その後、彼は自らの行動を後悔したと語ったと言われていますが、その時には手遅れでした。

1980年代はバルザーンにとって権力の頂点であり、彼の情報総局は情報収集と監視活動を強化していました。「ムハーバラートは最高だった」と振り返るバルザーンは、イラク国内外での情報操作を主導しました。また、彼はシーア派住民に対する残虐行為や強制移住、クルド人に対する戦争犯罪にも関与していたとされています。

ジュネーヴ大使時代と家族

1983年、バルザーンはジュネーヴに駐在する大使に任命されますが、これは実質的な左遷であり、以降の彼の政治的影響力は低下していきます。1987年には同僚を重傷に追い込む事件も起こし、その後も権力闘争に巻き込まれました。1994年、彼は義理の娘との結婚を巡り、サッダームとの関係が悪化。その後、サッダームの妻アフラムの死去が二人の間にさらなる亀裂をもたらしました。

バルザーンは帰国後、大統領顧問として名目上の地位を持ち続けましたが、その実態は権力から疎外されたものでした。彼の家庭は、彼の権力の象徴ともなっており、6人の子供を持っていましたが、彼らも政治的な混乱の影響を受けることとなります。

政権崩壊と最期

イラク戦争が近づく中、バルザーンは政権に対する不満を募らせており、サッダームに対して批判的な姿勢を見せていました。しかし、2003年4月にアメリカによって拘束され、彼の政治的キャリアは悲劇的な終焉を迎えることになります。
彼はドゥジャイル事件に関連して訴追され、2005年には絞首の判決を受け、2007年1月15日にその刑が執行されました。刑の執行時には、想定外の事故によって彼の首が外れるという異常な事態が発生しました。

最後に

バルザーンの人生は、イラクの権力構造の中に生きた一人の男の物語であり、政治的な絶望と裏切り、家族との関係が絡み合った複雑なものでした。彼の名は今でもイラクの歴史の中で語られています。

もう一度検索