バルニム10世 (ポメラニア公)

バルニム10世：ポメラニア公国の複雑な相続と外交

バルニム10世（1549年2月15日-1603年9月1日）は、ポメラニア公国の歴史において重要な役割を果たした人物です。「若公」や「敬虔公」といった異名を持ち、バルニム12世と呼ばれることもあります。彼はポメラニア公フィリップ1世とザクセン公爵家の出身であるマリアとの間に生まれた五男でした。

1569年、公領分割によりリューゲンヴァルデ（現在のダルウォボ）を領有しました。その後、大叔父であるバルニム9世の死後、ブクフとビトゥフの相続権を確保し、1573年に正式に継承しました。

バルニム10世の生涯における重要な出来事の一つに、ポーランド王女アンナとの婚姻交渉があります。この交渉はドラヒム城で王室長官スタニスワフ・センジヴォイ・チャルンコフスキを介して行われましたが、ポメラニア側への領土割譲要求を巡り決裂しました。ポーランド側は、バルニム10世が相続人なく亡くなった場合、寡婦であるアンナにチュウフフ、ドラヒム、ピワ、プツク、トゥホラ、ウイスコ、ヴァウェツキといった領土と40万ポーランドズウォティの寡婦財産を支払うことを提案していました。しかし、この条件は受け入れられませんでした。

結局、バルニム10世は1581年10月3日、アンスバッハにおいてブランデンブルク選帝侯ヨハン・ゲオルクとザビーナ・フォン・ブランデンブルク＝アンスバッハの娘であるアンナ・マリアと婚約、同年10月8日にはベルリン近郊のケルンで結婚式を挙げました。アンナ・マリアは翌年2月にポメラニアに到着しました。

1600年、兄ヨハン・フリードリヒの死後、バルニム10世はシュチェチンを継承し、ポメラニア公国の支配を拡大しました。しかし、1603年9月1日、後継ぎを残さずに亡くなりました。聖オットー教会に埋葬された後、弟のカジミール7世が短期間、公領を統治しました。

バルニム10世の生涯は、複雑な相続問題、隣国ポーランドとの微妙な外交関係、そして公領の維持と拡大という困難な課題に満ちていました。ポーランド王室との婚姻交渉の失敗は、彼の外交手腕とポメラニア公国の立場を象徴的に示しています。彼の死後、ポメラニア公国は新たな相続問題に直面し、その後の歴史に大きな影響を与えました。彼の統治は、ポメラニア公国における政治的・外交的な複雑さを如実に示しており、その生涯は歴史家にとって貴重な研究対象となっています。彼の統治期間は、ポメラニア公国の内部抗争や周辺勢力との複雑な関係の中で、安定と発展を模索した時代であったと言えるでしょう。彼の死は、ポメラニア公国に新たな混乱をもたらし、その後の歴史に大きな影響を与えました。様々な文献や史料から、彼の生涯と業績の詳細な分析が可能になり、ポメラニア公国史研究に重要な貢献を果たしています。バルニム10世は、単なる統治者としてだけでなく、時代背景や複雑な政治情勢の中で重要な役割を担った人物として、歴史に刻まれています。

参考文献

Kozłowski, Kazimierz; Podralski, Jerzy (1985). Gryfici. Książęta Pomorza Zachodniego. Szczecin: Krajowa Agencja Wydawnicza. ISBN 83-03-00530-8. OCLC 189424372
Rymar, Edward (2005). Rodowód książąt pomorskich. Szczecin: Książnica Pomorska im. Stanisława Staszica. ISBN 83-87879-50-9. OCLC 69296056
* Madsen U.. “Barnim X. Herzog von Pommern-Rügenwalde und Bütow”. 2012年2月19日閲覧。

もう一度検索