バルバラ異界

『バルバラ異界』は、萩尾望都が描くSF[[漫画]]作品で、『月刊フラワーズ』にて2002年から2005年にかけて連載されました。全24話、コミックスは全4巻で刊行されています。本作は、近未来の日本を舞台に、人の記憶や夢、生命、そして人間の業といった深遠なテーマを扱い、読者を独特の世界観へと引き込みます。

概要

この物語は、牛海綿状[[脳症]]（BSE）の原因とされるプリオンタンパク質が脳に影響を与えるという着想から、食肉を通じて記憶が受け継がれるというユニークなアイデアを軸に展開します。また、若返りや不老不死、アレルギーといった現代社会が抱える問題も物語に組み込まれ、夢と現実を行き来する複雑な構成が特徴です。物語には、かつてニューギニアで発生したクールー病（プリオン病の一種）の原因とされた、葬儀の参列者が死者を食べる習慣もエピソードとして取り入れられ、物語に深みを与えています。

小松左京の『ゴルディアスの結び目』から着想を得ており、『スター・レッド』で描かれた、火星に移住した地球人が火星人となるアイデアも物語の基盤として活用されています。

設定

物語の舞台は2052年の日本です。この時代、ドイツの21世紀ユング研究所では、人の夢を探索する「夢先案内人（ゆめさきガイド）」が公認されています。夢先案内人は、犯罪捜査にも協力し、最新の脳内イメージングスキャナーを使って、不鮮明ながらも夢を探索することが可能です。また、宇宙開発が進み、火星には基地が建設されており、コケ、カビ、原始的な菌類の化石が発見されていますが、基地では度々事故が発生しています。

物語の重要な要素として、少女の夢の中の世界があります。そこは約100年後の2150年で、2130年に火星人との戦争が起こり、その後「バルバラ人」がバルバラ島に隔離されているという設定です。バルバラ人は非常に長命で、不老不死の研究対象となっています。

あらすじ

物語は、プロの夢先案内人である渡会時夫が、両親の心中事件後7年間眠り続ける少女、青羽の夢の探索依頼を受けるところから始まります。青羽の夢の中には、人が空を飛び、不老不死のユートピアのような世界「バルバラ」が存在します。しかし、渡会の息子キリヤは、バルバラは自分が作り出した空想の島だと主張します。

渡会は青羽の祖母を訪ね、少女の両親の事件や、祖父が若い頃に失踪した事実を知ります。そして、祖父の写真がバルバラに住む少年や、老人である神父ヨハネと似ていることに気づきます。心理カウンセラーの目白は、少女を目覚めさせるには夢の中で少女を不幸にすれば良いと語ります。その夜、キリヤの夢に青羽が現れ、目白は竜巻に襲われ急死します。渡会は再び青羽の夢の世界を探索し、父親のいない少年タカに慕われます。一方、青羽の祖母は若返りの薬の人体実験に参加します。

登場人物

現実世界の住人

渡会時夫: 夢先案内人（ゆめさきガイド）。
北方キリヤ: 渡会時夫と北方明美の息子。15歳。幼少期に両親が離婚。
北方明美: 渡会時夫の元妻。キリヤの母。
十条青羽: 7年間眠り続ける少女。
十条菜々実: 青羽の祖母。十条製薬の会長。
マリエンバート: 菜々実の若返った姿。
十条茶菜: 青羽の母。夫を殺害し自殺。
目白秀吉: 十条茶菜が通っていた目白サイコ・クリニックの院長。
目白マシロ: 目白秀吉の息子。目白マヒルの双子の弟。
目白マヒル: 目白秀吉の娘。目白マシロの双子の姉。
大黒先生: 前世療法を行っている。
百田太郎: 青羽が眠る施設の研究員。通称モモタロー。
世羅ヨハネ: 明美の前世の夫とされる神父。児童施設「グリーンホーム」を経営。
パリス・グリーン: キリヤとライカの同級生。世羅ヨハネが経営していた児童施設出身。
エズラ・ストラディ: 菜々実の元夫。行方不明。
カーラー・シルスバーグ: 若返りの薬を研究。
花園蕾花（ライカ）: キリヤの同級生。
花園風仁: ライカのいとこ。
花園光介: ライカのいとこ。

バルバラの住人

青羽: 現実世界の青羽より幼い姿。
タカ: ダイヤの息子。
パイン: ダイヤの養子。
マーちゃん: 青羽の保護者。ダイヤの姉。パン屋を営む。
ダイヤ: タカとパインの母親。マーちゃんの妹。女優。
千里: 長髪の青年。夢で予言をする。
雷ジジ: 千里の祖父。娘は他界。
ヒナコ: 人形を作っている。
秋葉原コスモス: 子役のベテラン。

作品

1巻収録

その1 世界の中心であるわたし（『月刊flowers』 2002年9月号）
その2 眠り姫は眠る血とバラの中（『月刊flowers』 2002年10月号）
その3 公園で剣舞を舞ってはならない（『月刊flowers』 2002年12月号）
その4 彼の名は絶望彼女の名は希望（『月刊flowers』 2003年2月号）
その5 エズラはどこへ消えた？（『月刊flowers』 2003年3月号）
その6 六本木で会いましょう（『月刊flowers』 2003年5月号）

2巻収録

その7 きみに肩車してあげた（『月刊flowers』 2003年6月号）
その8 冷蔵庫の中のわたしを食べて（『月刊flowers』 2003年8月号）
その9 火星の海で泳いでいた（『月刊flowers』 2003年9月号）
その10 お父さんお帰りなさい（『月刊flowers』 2003年11月号）
その11 お誕生日は同じ10月1日（『月刊flowers』 2003年12月号）
その12 東池袋カササギのパン屋（『月刊flowers』 2004年2月号）

3巻収録

その13 長い長い遺伝子（ゲノム）の物語（『月刊flowers』 2004年3月号）
その14 大人にだってわからない（『月刊flowers』 2004年5月号）
その15 遠軽への遠い道（『月刊flowers』 2004年6月号）
その16 ひとつになりましょう（『月刊flowers』 2004年8月号）
その17 誰もあなたの名前を知らない（『月刊flowers』 2004年9月号）
その18 はじめてのことだから（『月刊flowers』 2004年11月号）

4巻収録

その19 ずっとあなたを愛していた（『月刊flowers』 2004年12月号）
その20 死者からのメッセージ（『月刊flowers』 2005年2月号）
その21 バルバラ崩壊（『月刊flowers』 2005年4月号）
その22 花小金井ヒコバエ保育園（『月刊flowers』 2005年5月号）
その23 ぼくのキリヤをかえしてくれ（『月刊flowers』 2005年7月号）
その24 遠い昨日から遠い明日へ（『月刊flowers』 2005年8月号）

脚注

外部リンク

barubara
バルバラ異界 - 小学館
* バルバラ異界（文庫本） - 小学館

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