バルビタール

バルビタール（Barbital）の概要

バルビタール、またはバルビトンは、1903年から1930年代にかけて使用されていた睡眠薬の一つで、初めてのバルビツール酸系薬剤として知られています。商品名はベロナール（Veronal）で、化学的にはジエチルマロニル尿素またはジエチル・バルビツール酸と呼ばれる物質です。その製造は、マロン酸のジエチルエステルと尿素を、ナトリウムエトキシドの存在下で反応させることで行われます。また、ヨードエタンをマロニル尿素の銀塩に加える方法でも合成可能です。バルビタールは無臭であり、わずかな苦味を持つ結晶性の白い固体です。

歴史的背景

バルビタールは、1902年にドイツの化学者エミール・フィッシャーとヨーゼフ・フォン・メーリングによって最初に合成されました。彼らは1864年に作られた薬物に手を加え、最終的にジエチル・バルビツール酸を発表し、1903年にはその成果が公開されました。翌1904年からは、バイエル社がベロナールという名称で販売を開始し、シェリング社はメジナル（Medinal）として流通させました。

バルビタールは主に神経興奮性の不眠症に対処するために使用され、カプセルなどの形態で提供されました。薬剤の標準的な用量は10〜15グレイン（約650〜970ミリグラム）でした。この薬は当時の他の睡眠薬に比べて画期的であり、特に味が改善されていたことで多くの支持を集めました。副作用もほとんどなく、安全性の面でも優れていました。

利用と影響

バルビタールは、その治療用量が中毒域よりも低いことからも利用されていましたが、長期にわたって使用するとともに耐性が形成されるため、必要な薬量が増加するという問題も抱えていました。さらに、遅効性であったため、致命的な過剰摂取が時折発生することもありました。その後、1960年代には、これらの問題点を改善したベンゾジアゼピン系薬剤が登場し、バルビツール酸系薬剤の需要は次第に減少しました。現在では、その使用はほぼ消滅しました。

文化的な側面

バルビタールは文学や映画の中でも取り上げられ、多くの作品に登場しています。日本の作家芥川龍之介は、この薬を用いて自ら命を絶ったことで知られています。また、ハリウッドの女優マリリン・モンローも過剰摂取によって命を落とした際にバルビタールが関与していました。

バルビタールが登場する作品

• - 映画:

- オールド・ボーイ（2003年）
- オリエント急行殺人事件（2017年）
- 記憶の夜（2017年）

• - ドラマ:

- 刑事コロンボ シーズン3 #24「白鳥の歌」（1973年）
- 刑事コロンボ シーズン6 #38「ルーサン警部の犯罪」（1976年）

• - 小説:

- アクロイド殺し（1926年）
- 学校の殺人（1931年）
- 人間失格（1948年）

このように、バルビタールは医学だけでなく、文化においてもその存在感を示しています。しかし、現代の医療においてはその用途は必須ではなく、より安全で効果的な治療法が求められています。

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