バルメン宣言

バルメン宣言

バルメン宣言は、1934年にカール・バルトを中心として発表された宣言であり、正式名称は「ドイツ福音主義教会(DEK)の現状に関する神学的宣言」です。これは、ナチス政権下のドイツにおける教会闘争において、イエス・キリストのみを唯一の支配者と見なす立場を明確にするもので、告白教会の神学的根拠となりました。

成立の背景

1933年にナチスが政権を掌握すると、ドイツ社会全体に国家社会主義の影響が及びました。大学では講義前にアドルフ・ヒトラーへの敬礼が求められるようになり、これにカール・バルトは抵抗しました。1934年4月には警察の尋問を受け、一時的に監禁されるも、バルトは屈することなく、告白教会を強化するための全国会議を提案しました。

同年5月29日から31日にかけて、ヴッパータール‐バルメンで第1回全国告白会議が開催され、バルトが起草した宣言が採択されました。これがバルメン宣言です。この宣言は、当時のドイツ福音主義教会内で主流であったドイツ的キリスト者とは相容れないものであり、教会内部でも様々な対立を生むことになりました。

内容

バルメン宣言は、全6条から構成されており、その中心的な主張は、イエス・キリストのみが唯一の主であるということです。国家や民族、あるいは政治的なイデオロギーが、キリストの主権を脅かすことを拒否し、聖書のみが信仰の唯一の根拠であることを強調しました。

この宣言は、単なる教義的な文書にとどまらず、信仰告白としての性格も有しています。それは、当時の政治状況下において、キリスト者としての信仰を守り、ナチズムに抵抗する決意表明でもありました。

その後の影響

バルメン宣言は、20世紀のドイツ教会における重要な指針となり、多くの福音主義領邦教会で基本信条として採用されました。しかし、その解釈をめぐっては、告白教会内部でも対立が生じました。

また、バルメン宣言に対しては、神学的な批判も存在しました。アンスバッハ・サークルからは、バルメン宣言に向けた神学的批判が発表され、旧約聖書学者や組織神学者からも様々な意見が出されました。一方で、ドイツ的キリスト者は、バルメン宣言を意図的に無視する態度を取りました。

現代においても、バルメン宣言は、教会における信仰のあり方、社会との関わり方について、重要な示唆を与え続けています。

参考文献

大島末男『カール・バルト』清水書院、1986年
カール・ヴィスロフ『現代神学小史』いのちのことば社、1975年
宇田進「バルメン宣言」(『新キリスト教辞典』)いのちのことば社、1991年
河島幸夫『戦争・ナチズム・教会』新教出版社、1993年

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