バロン (称号)

バロン（Baron）とは

バロンは、中世ヨーロッパにおいて用いられた貴族の称号の一つです。その語源は古フランク語の「baro」に遡り、「自由民」を意味していました。この言葉は、ラテン語やフランス語を通じてヨーロッパ各地に広まり、現代の多くの言語で「baron」という綴りが共通して使われています。例えば、イタリア語では「barone」と表記されますが、これも同じ語源を持つ言葉です。

歴史的変遷

初期においては、バロンは封建領主層全体を指す言葉でした。しかし、時代が進むにつれて貴族の階層が固定化されると、バロンは男爵に相当する爵位の一つとして認識されるようになりました。ドイツ語の「フライヘル（Freiherr）」も同様に男爵と訳されます。

中世初期

ヨーロッパ大陸では、国王などの君主の臣下であり、自由な身分として土地を所有する人々をバロンと呼んでいました。カロリング朝フランク王国が解体に向かう過程で、地方に派遣された役人や、比較的広い土地を所有する富裕な自由民の中から多くの領主が生まれ、彼らがバロンという階層を形成しました。

騎士との関係

バロンを含む領主たちは、騎士と呼ばれる階層の人々と主従関係を結びました。バロンは、より小規模な土地所有者であった騎士の土地所有を保証したり、新たに知行を与えたりすることで、騎士を家臣としました。バロンの中には、王や伯、侯、公などの有力な封建領主に仕える者もいましたが、自分の領土内では領主として封建的な権力を行使し、時には主君を変えることも辞さない自由を持っていました。

集権化と貴族階層の形成

時代が進み、国王や領邦君主による集権的な支配が進むと、領主たちは君主を頂点とする貴族階層にまとめられていきました。バロンの称号を持つ領主は、貴族階層の中で下位に位置づけられるようになりました。

近世以降

ヨーロッパ大陸の多くの国では、近世以降、バロンは爵位貴族の下層、つまり男爵にあたる階層となりました。ただし、神聖ローマ帝国では「フライヘル」の称号を持つ領主が男爵に相当し、バロンはさらに低い階層の貴族を指すようになりました。

イングランドにおけるバロン

フランク王国の支配を受けなかった中世のイングランドでは、七王国時代にはバロンという称号は存在しませんでした。しかし、ノルマンディー公国からイングランドを征服したウィリアム1世が、フランスのバロンの称号を導入しました。この時、イングランド王から直接封土を授けられた封臣たちがバロンと呼ばれるようになり、当初はすべての封建貴族を意味していました。

やがて、イングランドでは爵位制度が整備され、バロンは世襲爵位の最下位、つまり男爵と訳される称号へと変化しました。

スコットランドにおけるバロン

イングランドの隣国であるスコットランドでは、バロンは男爵領（barony）と呼ばれる荘園の保有者を指しました。イングランドにおけるバロンにあたる爵位には「ロード・オブ・パーラメント（lord of parliament）」が使われ、バロンは議会に議席を持つ上級貴族の称号とはなりませんでした。

関連項目

男爵
レッドバロン
* 豪族

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