バングラデシュ標準時

バングラデシュ標準時について

バングラデシュでは、協定世界時（UTC）を6時間進めた時間帯、UTC+6を標準時として使用しています。これはバングラデシュ標準時（Bangladesh Standard Time, BST）として知られています。過去には、電力危機への対策として夏時間が導入された時期もありましたが、現在では廃止されています。

歴史

バングラデシュの標準時は、歴史的にいくつかの変遷を経てきました。イギリス統治下時代には、ベンガル地域は1858年から1941年までカルカッタ時間（UTC+5:53:20）を使用していました。

第二次世界大戦中には、以下の通り短期間で標準時が頻繁に変更されています。

1941年10月1日：UTC+6:30に変更
1942年5月15日：UTC+5:30に変更
* 1942年9月1日：UTC+6:30に再度変更

1947年にイギリスによる統治が終わり、インドとパキスタンが分離独立した後、現在のバングラデシュにあたる東パキスタンでは、標準時の変更はありませんでした。
1951年に、標準時がUTC+6:30から現在のUTC+6に変更されました。

夏時間の導入と廃止

2009年、バングラデシュでは電力不足を解消する目的で、一時的に夏時間が導入されました。電力開発庁が主導して夏時間導入計画が提案され、多くの省庁がこの計画に賛同しました。

夏時間導入の時期は、高校卒業資格試験（HSC）を考慮し、6月19日の深夜に時刻を1時間進め、9月30日の深夜に元に戻すことになりました。当時、バングラデシュでは発電能力が3800〜4000MWであるのに対し、電力需要は4800〜5800MWに達していました。政府高官は、電力供給量を増やすよりも、夏時間導入による節電の方が容易であると判断しました。

しかし、夏時間導入は期待された効果を上げることができませんでした。時刻の変更に慣れない人が多く、夏時間に従わない店や企業も存在しました。また、電力不足による停電も改善されず、不満の声が高まりました。さらに、夏時間によって日照時間が増加したことが、かえって電力消費量を増加させる結果になったと考えられています。バングラデシュのような熱帯地域では、日中の気温が高く、冷房などの需要が高まるため、日照時間の増加は必ずしも節電にはつながらないのです。

結果として、夏時間は当初の予定より遅れて2009年12月31日の深夜に終了しました。2010年には、3月31日から10月31日の期間で再度導入される予定でしたが、2010年3月22日に内閣によって計画が破棄されました。この決定の理由として、「公共の利益」が挙げられ、夏時間制度は完全に廃止されました。

IANA time zone database

IANA time zone databaseのzone.tabには、バングラデシュの標準時が1つ登録されており、正式なタイムゾーン情報として利用されています。

バングラデシュの標準時は、過去に様々な変遷を経て現在に至っています。夏時間の導入と廃止は、電力事情や生活習慣、社会的な要因が複雑に絡み合った結果であり、国の時間制度が社会に与える影響を示す一例と言えるでしょう。

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