バンゴール海軍潜水艦基地

バンゴール海軍潜水艦基地

バンゴール海軍潜水艦基地（Naval Submarine Base Bangor）は、かつて独立したアメリカ合衆国海軍の潜水艦基地でしたが、2004年にブレマートン海軍施設と統合され、キトサップ海軍基地の一部となりました。ワシントン州、ピュージェット湾のフッド・カナルに位置し、太平洋におけるオハイオ級戦略原子力潜水艦の母港として、アメリカの核抑止戦略を支える極めて重要な軍事拠点です。

歴史

この基地の起源は、第二次世界大戦中の1942年、アジア・太平洋戦線向けの弾薬集積・出荷施設にあります。広大な土地が取得され、1945年1月には弾薬庫として運用が始まりました。第二次世界大戦からベトナム戦争期まで、通常兵器供給を担いました。

1973年、海軍はバンゴールをオハイオ級トライデント潜水艦の第一陣の母港に指定することを公表し、1977年2月1日にはトライデント潜水艦基地として正式に活動を開始しました。基地内には、トライデント弾道ミサイルの保守や核弾頭の供給を行う太平洋戦略兵器施設（SWFPAC）が設置されました。

1982年8月、バンゴールはアメリカ海軍におけるオハイオ級原子力潜水艦の最初の配備先となります。オハイオ級の運用部隊である第17潜水戦隊が置かれ、合計8隻のオハイオ級潜水艦が配備されました。1988年には、母港とする潜水艦がオハイオ級として通算100回目の戦略抑止哨戒を達成しています。

バンゴールは、太平洋艦隊におけるオハイオ級潜水艦の唯一の拠点であり、大西洋艦隊のキングズベイ海軍潜水艦基地と対をなします。1978年以降、海兵保安部隊大隊が弾道ミサイル潜水艦と関連施設の保安任務を担当しています。

基地施設

バンゴール基地は、総面積約3200万平方メートルに及ぶ広大な敷地を持ち、海岸線に沿って多様な施設が配置されています。主要施設には、消磁施設、爆発物取扱桟橋（トライデントミサイル積み下ろし用）、デルタ埠頭、バンゴール・ドック、支援桟橋などがあります。内陸部にはトライデント準備施設やSWFPACがあり、ミサイルの整備・調整が行われています。

基地南部には居住区があり、約5100名の乗組員とその家族が暮らしています。軍関係者に加え、約1万1000人の民間人が基地に雇用されており、地元北キトサップ郡最大の雇用主となっています。

基地内にはトライデント訓練施設も設置されており、オハイオ級潜水艦とトライデントミサイルの運用・整備に関する包括的な教育・訓練が提供されています。この施設は1978年に運用を開始し、多様なコースが開講されています。

その他の役割

バンゴールは主にオハイオ級の支援拠点ですが、特殊任務に特化した潜水艦の母港としても機能します。かつて「パーチー」（2004年退役）が、現在はシーウルフ級の「ジミー・カーター」が、この基地を母港としています。

バンゴール海軍潜水艦基地は、その戦略的な位置と機能により、アメリカ海軍の戦略核抑止力の中核を担う重要な役割を果たし続けています。

もう一度検索