バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは

バンドワゴン効果とは、ある選択肢が多くの人に選ばれているという状況が、その選択肢を選ぶ人をさらに増やす現象を指します。「バンドワゴン」とは、パレードの先頭を飾る楽隊車を意味し、「バンドワゴンに乗る」という言葉は、時流に乗る、多数派に同調する、勝ち馬に乗るという意味で使われます。この効果は、経済学、政治学、社会学など様々な分野で研究されており、人々の意思決定に大きな影響を与えることが知られています。

経済学におけるバンドワゴン効果

経済学、特にミクロ経済学においては、バンドワゴン効果は、ある財を消費する人が多ければ多いほど、その財を消費することによる効用が増大する現象と定義されます。ハーヴェイ・ライベンシュタインは、この効果を消費の効用に対する影響のうち、流行に乗ること自体が持つ効果として「バンドワゴン効果」と名付けました。この効果は、他人の消費が外部性に影響を与える現象の一種と見なすことができます。

ライベンシュタインは、バンドワゴン効果と対比される現象として、スノッブ効果とヴェブレン効果を挙げています。スノッブ効果は、他人と同じものを消費したくないという心理から生じる負の外部性であり、ヴェブレン効果は、高価なものを消費することで効用が高まる効果です。これらの外部性の存在は、個人の需要曲線を単純に足し合わせるだけでは市場全体の需要曲線を構成できないことを示唆しています。しかし、限界的な外部効果が逓減する場合には、安定的な市場需要曲線が存在することも示されています。

政治学におけるバンドワゴン効果

政治学におけるバンドワゴン効果は、選挙において、マスメディアの選挙予測報道などで優勢とされた候補者に有権者が投票しやすくなる現象を指します。これは、有権者が勝ち馬に乗ろうとする心理によるもので、選挙直後の世論調査で当選候補に投票したと答える人の割合が、実際の得票率を上回る例が多く見られます。このような行動の動機は、単純な心理的な満足を求める場合や、実利的な判断による場合があります。

特に、投票の秘密が守られない状況や、誰に投票したかがわかる場合には、勝者による論功行賞への期待や報復への恐れから、バンドワゴン効果が強く働くことがあります。これは、間接選挙や組織票の獲得、政治資金集めなどの状況で顕著に見られます。

さらに、自分の投票が無駄になることを避けるために、当選の見込みが低い候補者への投票を避け、当選の可能性が高いとされる候補者に投票する戦略投票も、バンドワゴン効果の一例として挙げられます。一方で、これとは反対に、劣勢な候補者を応援する「判官びいき」のようなアンダードッグ効果も存在します。

1993年のドイツ連邦議会選挙では、キリスト教社会同盟とドイツ社会民主党が争った際、事前の予想を覆し、キリスト教社会同盟が圧勝しました。この現象は、劣勢と予想されていたドイツ社会民主党の支持者が沈黙し、多数派であったキリスト教社会同盟支持者の勢いが増したことによるバンドワゴン効果の典型的な例とされています。

バンドワゴン効果の応用

バンドワゴン効果は、経済学や政治学だけでなく、現代社会の様々な場面で応用されています。例えば、犯罪抑止策としてのDNA登録義務法に関する議論では、強制ではなく任意制にした場合でも、バンドワゴン効果によって多くの人が登録するようになり、結果として強制的な効果が生まれる可能性が指摘されています。

雇用する側から見れば、DNA登録済みの者を優先的に雇用する傾向が強まる可能性があり、経済的な理由から自主的にDNA登録を行う人が増えると考えられます。また、登録していない者は犯罪者予備軍と見なされる可能性があり、その差別的なレッテルを避けるためにDNA登録が進むという連鎖が起こりえます。このような社会的同調心理にも、バンドワゴン効果の原理が働いていると言えます。

まとめ

バンドワゴン効果は、人々の意思決定に大きな影響を与える現象であり、経済、政治、社会など様々な分野で観察されます。この効果を理解することで、集団心理や行動のメカニズムをより深く理解し、社会現象を分析する上で役立つでしょう。

参考文献

山岸俊男 編『徹底図解 社会心理学（カラー版）』新星出版社、2018年。
向谷 匡史『ヤクザの実戦心理術―なぜ彼らの言いなりになってしまうのか』(ワニ文庫) 、2010年。

関連項目

アナウンス効果
デュヴェルジェの法則
ポジショントーク
アビリーンのパラドックス
* 提灯記事

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