バン・ジョンソン

バン・ジョンソン：アメリカンリーグの父

バン・ジョンソン（Byron Bancroft "Ban" Johnson、1865年1月5日 - 1931年3月28日）は、アメリカンリーグ（AL）の設立に中心的な役割を果たし、初代会長を務めた人物です。彼の功績は、アメリカ野球界におけるプロ野球の発展に大きく貢献しました。

ウェスタンリーグからの出発

ジョンソンはオハイオ州で生まれ、マリエッタ・カレッジで法律を学びました。その後、シンシナティの地元新聞でスポーツ編集者となり、シンシナティ・レッズの監督だったチャールズ・コミスキーと親交を深めます。コミスキーの推薦もあり、1893年にウェスタンリーグの会長に就任しました。

当時のナショナルリーグ（NL）は、粗野な雰囲気が問題視されていました。ジョンソンは、野球をより多くの人々、特に子供や女性にも親しみやすいものにするため、リーグのイメージ刷新に尽力します。審判に強い権限を与え、選手や監督の言動に対する厳格なルールを導入し、フェアで規律あるリーグ運営を目指しました。その結果、ウェスタンリーグはマイナーリーグ最強のリーグとしてだけでなく、最も効率的なリーグとして評価を高めました。

アメリカンリーグの設立

ジョンソンの野望は、もう一つのメジャーリーグを創設することでした。コミスキーの協力を得て、ウェスタンリーグの拡大計画を推進。1900年にはリーグ名をアメリカンリーグと改称し、1901年にはメジャーリーグとしての運営を宣言しました。ボルチモア、ボストン、フィラデルフィア、ワシントンD.C.に新たなチームを設立し、着々と勢力を拡大していきます。

1901年、ナショナルリーグが選手の年俸上限を低く設定したことが、ジョンソンにとって大きなチャンスとなります。彼はナショナルリーグの選手たちに高額な年俸を提示し、多くの有力選手を獲得しました。この結果、アメリカンリーグは急速に力をつけ、ナショナルリーグと並び立つ存在となったのです。

権力と凋落

アメリカンリーグはナショナルリーグとの激しい競争の末、両リーグは和解し、アメリカンリーグは2つ目のメジャーリーグとして正式に認められました。両リーグの会長とレッズのオーナーによるコミッションが設立され、ジョンソンが実質的な権力を握りました。

しかし、ジョンソンは批判を許さず、気に入らない人物がオーナーになるのを妨害するなど、その強権的な姿勢が反発を招きます。特に、ボストン・レッドソックスのオーナー、ハリー・フレージーとの対立は、ジョンソンの凋落のきっかけとなりました。

1919年のブラックソックス事件では、コミスキーからの通告を無視したことが批判を浴び、1920年代にはコミッショナーのケネソー・マウンテン・ランディスとの対立が深刻化。1926年、タイ・カッブとトリス・スピーカーの八百長疑惑を巡るランディスとの対立をきっかけに、ジョンソンはアメリカンリーグ会長を辞任することになりました。

遺産

ジョンソンは1931年にミズーリ州セントルイスで亡くなりましたが、その功績は色褪せることはありません。1937年には野球殿堂入りを果たし、彼の名はマリエッタ・カレッジの選手用フィールドハウスに刻まれています。

ウィル・ハリッジはジョンソンの死後、「彼は野球界で最も輝いた人物だった。スポーツ史の中で、野球を国技とするのに誰よりも貢献した」と称えました。バン・ジョンソンは、アメリカンリーグの父として、その名を永遠に野球史に刻み続けています。

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