バークシャー種

バークシャー種

バークシャー種は、イギリス南東部のバークシャー地方を起源とするブタの一品種です。その外見は中型で、特徴的な黒い被毛に、鼻先、四肢の先端、そして尾の先に白い斑点を持つことから、「六白豚（ろっぱくとん）」という別名でも知られています。主に食肉用として世界各地で飼育されています。

歴史

バークシャー種の歴史は古く、そのルーツは原産地バークシャーに古くからいた在来豚にあります。18世紀以前のバークシャーの豚は、耳が垂れており、体格が大きく、しばしば黒っぽい斑点を持つ褐色でした。18世紀後半から19世紀初頭にかけて、品種改良が進められました。この改良には、アジアから持ち込まれた小型の黒色のブタが重要な役割を果たし、在来種とシアメース種や中国種、ネオポリタン種などが交配されました。この改良によって現在のバークシャー種の基礎が確立され、1820年頃には品種として固定化されました。さらに1851年以降は、その純粋な血統が維持されるようになりました。

原産国であるイギリス本国では、現在ではバークシャー種は希少な品種とされています。具体的には、ハートフォードシャーのアルデンハム・カントリー・パークにある希少種保存トラストや、ケントのサウス・オブ・イングランド希少種センターといった機関によってその保存が図られています。2008年には絶滅危惧種に指定され、当時の繁殖可能な雌豚の数は300頭以下と報告されていましたが、近年、日本の市場における「高級豚肉」としての需要に関連して人気が再び高まり、飼育頭数は増加傾向にあるとされています。

バークシャー種は、その優れた性質からイギリス国外へも広く輸出されました。オーストラリア、日本、ニュージーランド、アメリカ合衆国など、多くの国々に渡り、中には特に多数飼育されるようになった国もあります。国際連合食糧農業機関（FAO）の動物多様性情報システム（DAD-IS）には、南北アメリカ、ユーラシア大陸、オセアニア地域にわたる23カ国からバークシャー種の飼育状況が報告されています。

アメリカ合衆国への輸出は、比較的早い時期である19世紀初頭に始まりました。1875年には、アメリカバークシャー協会が設立されましたが、これはブタの品種としては国内で最初の品種登録協会でした。この協会に最初に登録されたブタは「エース・オブ・スペード」と名付けられ、これはヴィクトリア女王が飼育していた個体であったと伝えられています。

日本へは1860年代に導入され、以降数多く飼育されるようになりました。日本のブランド豚として有名な「かごしま黒豚」は、1930年代に日本に輸入された2頭のイギリス系バークシャー種に由来すると言われていますが、現在の日本ではバークシャー種とは別の品種として扱われています。一般的に「黒豚」として流通し、その肉は高い品質から高値で取引されることも珍しくありません。

特徴

バークシャー種は中型のブタです。成熟した雄は体重が約280キログラムに達し、雌は約220キログラムになります。最も特徴的なのはその体色で、全身が真っ黒な被毛に覆われていますが、6つの明確な白いマーキングがあります。これらの白い部分は、四肢のそれぞれ先端にある「白いソックス」と呼ばれる部分が4箇所、鼻の先端にある白い部分が1箇所、そして尾の先端の白い部分が1箇所の合計6箇所です。この「六白」のパターンは、バークシャー種を識別する上で非常に重要な特徴となっています。

利用

バークシャー種はその優れた肉質から、主に食肉を得る目的で飼育されています。他の品種と比較して、バークシャー種の肉はpH値が比較的低い傾向にあります。一般的に食肉のpH値は消費者の満足度と関連があるとされますが、バークシャー種の肉はアメリカで行われた味覚テストにおいて、高い評価を獲得しています。これは、その独自の肉質が多くの人々に好まれる味わいを持っていることを示しています。

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