バーゼル・フェア

バーゼル・フェア（BASELWORLD）

バーゼル・フェアは、毎年3月から4月にかけてスイス・バーゼルで開催されていた、世界最大の時計と宝飾の見本市です。このイベントはMHグループの子会社であるMCHスイス・エキシビションが主催し、1972年に現在の形態が確立されました。バーゼル・フェアは商談を目的としたものであり、業界関係者に加えて一般客も入場が可能でした。観覧パスを購入することで、一般の人々も会場の雰囲気を楽しむことができました。2007年以降、来場者数は年間で10万人を超える盛況ぶりで、音楽やアートと共に成長を続けていました。

歴史と特徴

バーゼル・メッセは、高級ブランドが1階、普及ブランドが2階という構成になっており、会場内は賑やかな雰囲気でした。しかし、飲食施設はあまり充実しておらず、ホットドッグを手にしながら商談をする光景が定番となっていました。この状況を受け、カルティエなどの高級時計メーカーが1991年にバーゼル・フェアから独立し、ジュネーブで国際高級時計サロン（SIHH）を設立しました。

出展には高額な費用がかかり、特に1階のメイン会場では数億円の出店費用がかかるとされています。SIHHの出展料も高く、約2000万円となることがあるため、出展者たちは費用対効果を考慮しながら出展を検討していました。

その中で、1990年代の時計業界再編に伴い、ジュネーブ・サロンへ移行するブランドが増える中でも、バーゼル・フェアは来場者数を減少させることはありませんでした。しかし、国際的な機械式時計市場が活況を呈する中で、出展者や来場者の状況は徐々に変わることになります。

バーゼル・フェアの衰退と新たなサロン

近年では、時計価格の高騰や中国市場の停滞といった影響が重なり、ジュネーブ・サロンも出展者の多様化へと舵を切りました。新進気鋭の高級時計メーカーや独立時計師が積極的に参加する姿勢を打ち出し、一般客向けの有料入場も認められるようになりました。

2012年から2013年には会場の改装が行われ、ブースが拡張され、2013年には入場者数が12万2000人を記録しました。しかしその後も出店料の高騰が影響し、出店メーカーは急速に減少し、2018年には全盛期の半分以下の650社まで激減しました。これを受け、スウォッチグループはバーゼル・フェアからの撤退を発表しました。

2020年には新型コロナウイルスの影響により、バーゼル・フェアとジュネーブサロンが予定通り行われることはなく、それにより事実上の終了を迎えることになりました。以降、ジュネーブサロン（ウォッチズ＆ワンダーズ）が新たなプラットフォームとして定着し、新作発表の場として機能しています。

バーゼル・フェアは、時計業界の巨人たちが集い、交流を深めた歴史あるイベントでしたが、その役割をジュネーブへと譲り渡しました。業界の変遷と共に、新たな時代を迎えた時計文化は今後も進化し続けることでしょう。

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