バーデン＝バーデンの密約

バーデン=バーデンの密約

バーデン=バーデンの密約とは、1921年に日本陸軍の士官達が陸軍の改革を誓い合った出来事を指します。この密約は、1921年10月27日に南ドイツの保養地バーデン＝バーデンで実施されたもので、陸軍士官学校16期の同期生である岡村寧次、永田鉄山、小畑敏四郎の三名が中心となりました。彼らは、近い将来に迫る戦争に備え、陸軍の人事刷新や軍制改革を行うことを約束しました。

密約の背景

この密約の背景には、1913年から1919年にかけて三者が陸軍の改革に対する強い思いを抱いていたことがあります。暗い情勢の中で、彼らは陸軍の威信の回復と革新を目指し、定期的に勉強会を開いて意見を交わしていました。週末には小畑宅で、岡村、永田、小畑に加え、後の陸軍の中心人物となる東條英機が集まって議論をしていたと言われています。

1920年には、彼らは長州閥の中に孤立していた真崎甚三郎軍事課長を支援することを決意しました。このような士気の高まりが、バーデン＝バーデンでの密約への道を築いたのです。

密約後の動き

バーデン=バーデンの密約の後、岡村、永田、小畑は1922年と1923年に帰国し、再度の会合を持ちました。その結果、彼らの仲間は増え、1927年頃には「二葉会」という新たな組織が結成されました。永田は鈴木貞一が設立した「木曜会」との合併を図りますが、一部のメンバーからの反対に直面しました。しかし、彼の巧妙な政治手腕により、1929年には二葉会と木曜会が統合され、「一夕会」として新たなスタートを切りました。

三人の関係は1928年まで親密さを保っていましたが、その後は次第に疎遠になり、手紙のやり取りも途絶えたと言われています。1932年には小畑が作戦課長に就任し、上海出兵や満洲事変の計画を主導しました。彼は実力主義を貫こうとし、陸軍内の他の関係者、特に東条との摩擦を引き起こしました。

陸軍内の対立と分裂

1932年後半には、一夕会の内部で二つの派閥が形成されました。一つは永田を中心にした統制派、もう一つは小畑を中心とする皇道派です。1933年には、日ソ不可侵条約や東支鉄道買収の問題を巡って永田と小畑の間に深刻な対立が生じました。特に1933年8月には、荒木陸相が二人を異動させる決定を下し、これがさらに二派の対立を深める要因となりました。

最終的に永田は1934年に軍務局長に任命されましたが、小畑は中央への復帰を果たすことはできませんでした。このように、バーデン=バーデンの密約から始まった陸軍改革の動きは、様々な派閥の衝突を呼び起こし、日本の陸軍の運命を大きく左右する要因となりました。

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