皇道派

皇道派とは

皇道派（こうどうは）は、大日本帝国陸軍内に存在した派閥であり、その活動の根底には天皇親政の実現、すなわち日本政府を天皇の直接の支配下に置くことを目指す思想がありました。この派閥は、北一輝の影響を受けて、昭和維新という国家改造の理念を掲げており、特に対外的にはソビエト連邦との対峙を重要な課題としていました。

名称の由来と理論

皇道派の名称は、理論的指導者とされた荒木貞夫が「皇軍」と呼ぶことに由来しています。彼は、政財界の不正を排除し、天皇親政による国家改造を提唱しました。実際、皇道派は統制派としばしば対立していたものの、統制派の中心人物である永田鉄山の主張によれば、皇道派が存在するだけで「統制派」なる派閥はなかったとされています。

皇道派の全盛期と内部対立

皇道派の全盛期は、荒木が陸軍大臣に就任していた時期で、特に犬養内閣の間において陸軍の主導権を握りました。彼は運営の手法を通じて、皇道派に反する者を左遷したり、派閥同士の対立を助長しました。このような処置は多くの中堅幕僚層の反発を招き、後に永田や東條英機を中心に統制派として集結することになります。

両派はその後も対立を続けましたが、皇道派は若手将校の過激な行動によって衰退を余儀なくされました。この時期、陸軍内の権力構図が変動し、旧薩摩閥の影響も受け入れられていました。

皇道派の誕生背景

皇道派の形成は、宇垣一成陸相の下での宇垣軍縮の時期に生まれました。この軍縮では地上兵力の削減が行われ、その予算が航空機や戦車部隊の新設に振り向けられました。永田は国外の軍事体制のあり方を視察し、日本の軍事力や政治体制の遅れを痛感します。この軍縮は、統制派の基盤ともなり、その後の軍的対立の発端となりました。

宇垣の実権の下で冷遇されていた荒木と真崎は、この動きに対抗する形で活動を展開しました。特に荒木はシベリア派遣軍参謀としての経験から、ソ連との戦争観を強め、青年将校による国家改造運動に影響を与えました。

青年将校の運動とクーデター計画

青年将校らは、ソビエトの動向や昇進の遅れに不安を抱き、軍内の腐敗に対抗する動きを強めていきました。荒木が陸相に就任した1931年から1932年にかけて、彼は青年将校たちを鼓舞し、武力による「維新」を志向しました。これにより、彼らの中に皇道派が根付きました。

しかし、クーデター計画が進行する中で、彼らは具体的な計画を持たず、結果的に失策を重ねる結果となり、永田を暗殺した時点でその意義を失ってしまいました。

凋落と粛清

皇道派は、荒木や真崎の辞任、そして彼らの後を担った者たちが中央から排除されたことにより、その存在基盤を失う結果となります。特に1936年には、青年将校を中心に二・二六事件が発生し、その後の大規模な粛清が実施され、皇道派はほぼ壊滅状態に追い込まれました。

この一連の流れは、日本の歴史において重要な転換点であり、皇道派の理念が如何にして大日本帝国の行動に影響を与えたか、またその衰退がいかにして日本の軍政に新たな局面をもたらしたかを知る手がかりとなります。

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