バートリ・エルジェーベト

バートリ・エルジェーベトの生涯と残虐行為



バートリ・エルジェーベト、またの名をエリザベート・バートリは、1560年ハンガリー王国貴族に生まれ、1614年に亡くなるまでの生涯を通じて、数々の悪名高い事件に関与したことで知られています。彼女は、「血の伯爵夫人」として知られ、吸血鬼伝説のモデルともされる存在であり、その残忍な行為は今なお人々の記憶に刻まれています。

家系の背景


エルジェーベトはバートリ家に生まれ、同家は16世紀から17世紀にかけてトランシルヴァニア公国で最も有力な家門の一つでした。彼女の父はエチェディ=バートリ・ジェルジ、母はショムヨーイ=バートリ・アンナであり、華麗な血筋を持つことで知られていました。しかし、その家系はまた、悪魔崇拝や色情狂といった噂にも晒されており、エルジェーベト本人も幼少期から感情の起伏が激しいという特異な性格を有していたと言われています。

1575年には5歳年上の貴族ナーダシュディ・フェレンツ2世と結婚。しかし、この結婚にも血族結婚の背景があり、エルジェーベトは夫の地位以上に伝統的な家柄を持っていたため、その後もバートリ姓を名乗りました。夫は対オスマン戦争の英雄として知られる一方、その残虐さでも知られていました。

残虐性の始まり


エルジェーベトの残虐行為は、夫が戦争に出ている間に始まりました。彼女は自らの美しさを保つことに執着し、そのためには非常に過酷な手段を取るようになりました。夫が亡くなると、彼女はチェイテ城に移り住み、そこでさらに残虐な行為に手を染めることになります。最初は農奴の娘を誘拐して惨殺することから始まり、次第に下級貴族の娘たちにまでその標的を広げました。

彼女は、拷問によって楽しみを見出すかのように、様々な手段で娘たちを痛めつけ、その虐待に快感を覚えていたとも言われています。使用人に命じて行わせた残虐行為は、鉄の処女を用いたり、被害者の身体を切り裂くなど、常識を超えたものでした。

裁判と逮捕


1611年、エルジェーベトの行いはついに発覚し、裁判が行われることになります。生き残りの被害者やその家族が証言し、彼女の残虐行為が明らかになりました。証言によれば、エルジェーベトは彼女の寝床の側に灰を撒く習慣があり、流血を楽しんでいたともされています。推定される被害者数は650人とも言われ、彼女の悪名高い行為が広く知れ渡ることになりました。

裁判では、共犯者として何人かが処罰されましたが、エルジェーベトは高貴な家系であったため、死刑にはされず、幽閉という形での処罰となりました。彼女はチェイテ城の寝室に生涯を持つこととなり、その後3年半を過ごすことになります。

生涯の終焉


エルジェーベトは1614年に亡くなるまで、幽閉状態で過ごしました。死の際には、食物の差し入れ用に設けられた小窓から覗かれ、その時点で彼女が死亡していることが確認されました。彼女の所領は子供たちが相続することとなり、一族の名声が失われることはありませんでした。

吸血鬼伝説と文化への影響


エルジェーベトの残虐な行為が語り継がれる中で、吸血鬼伝説の素材としても用いられるようになりました。彼女の行動は作家や映画製作者に利用され、多くの小説や映画作品が彼女を題材にしています。

特に、シェリダン・レ・ファニュの小説『カーミラ』やブラム・ストーカーの『ドラキュラ』は、彼女のイメージを引き継いでいます。また、音楽やゲーム、アニメに至るまで、バートリ・エルジェーベトは様々なメディアで取り上げられ、今でも彼女の影響は色濃く残っています。彼女の名は、21世紀の現在においてもなお、恐怖と伝説の象徴として語られ続けています。

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