バートリ・ジグモンド

バートリ・ジグモンド：トランシルヴァニア公、その波乱の生涯

バートリ・ジグモンド（1572年 - 1613年）は、16世紀後半のトランシルヴァニア公であり、その生涯は波乱に満ちていました。彼はバートリ家の出身で、トランシルヴァニア公バートリ・クリシュトーフの息子であり、ポーランド王ステファン・バートリの甥にあたります。また、血の伯爵夫人として知られるバートリ・エルジェーベトとは従姉弟の関係にありました。

若き日の即位と親政

ジグモンドは父の存命中に公に選出されましたが、父の死後、10歳未満であったため、公国の統治は摂政に委ねられました。1588年、ジグモンドは親政を開始し、オスマン帝国に対抗するキリスト教徒君主の同盟に参加しました。しかし、この対トルコ政策は公国にとって危険を伴うものでした。議会からは戴冠式の宣誓文書を要求されましたが、彼が拒否したため、退位を迫られる事態となりました。最終的に、ジグモンドは政敵を打ち破り、逮捕した者を処刑することで権力を確立しました。

ワラキアとの関係と結婚

1595年、ジグモンドはワラキアの統治者ミハイ勇敢公と条約を結び、ワラキアをトランシルヴァニアの主権下に置くこと、そしてミハイ勇敢公のオスマン帝国との戦いを支援することを約束しました。同年、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の従妹マリア・クリスティーナと結婚しましたが、夫婦生活はうまくいかず、後に離婚しています。

戦争と退位、そして復位

1595年8月、ミハイ勇敢公はトルコ軍を撃破しましたが、軍勢が不足したためトランシルヴァニアへ退却しました。その後、ボチュカイ・イシュトヴァーン率いるトランシルヴァニア軍が加わり、ワラキアを解放しました。ジグモンドは狂信的なイエスズ会信者であり、信仰と神秘主義に傾倒するようになり、トランシルヴァニア公の地位を退くことを試みました。

1597年、ジグモンドはトランシルヴァニア公を退位し、公位をルドルフ2世に譲りました。その見返りとして、シロンスク地方のオポーレ公国を獲得し、神聖ローマ帝国の諸侯の仲間入りを果たしました。しかし、1598年にはトランシルヴァニア公に復帰しています。

再び退位、そしてミハイ勇敢公の台頭

1598年4月、ジグモンドは再び退位を試みましたが、半年後には撤回しました。翌1599年に再度退位し、従兄のバートリ・アンドラーシュ枢機卿に公位を与えました。しかし、このことはトランシルヴァニアがポーランド王ジグムント3世の影響下に入ることを意味し、ミハイ勇敢公の反発を招きました。ミハイ勇敢公はルドルフ2世との同盟を再結成し、トランシルヴァニアを掌握しました。

晩年

1600年、ジグモンドはポーランド人とコサックの軍勢を率いてトランシルヴァニア公の座を奪還しようとしましたが、ミハイ勇敢公に撃退されました。1601年に一時的に公に復帰しましたが、再び退けられ、二度と復帰することはありませんでした。1613年、ジグモンドはプラハで客死しました。

バートリ・ジグモンドの生涯は、トランシルヴァニア公としての権力、オスマン帝国との関係、信仰への傾倒、そして退位と復位を繰り返した波乱に満ちたものでした。彼の統治は、トランシルヴァニアの政治情勢に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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