バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル

バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル

『バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル』（Byrd Blows on Beacon Hill）は、著名なジャズ・トランペット奏者であるドナルド・バードが、1956年に録音し翌1957年に世に送り出したスタジオ・アルバムです。この作品は、彼のリーダー・アルバムの中でも極めて異色な位置を占めています。

編成の特徴

本作の最も特筆すべき点は、ドナルド・バードのリーダー作品としては、唯一ワン・ホーン・カルテットという編成で録音されていることです。通常、複数の管楽器が参加するセッションが多いバードのキャリアにおいて、トランペット一本に焦点を当てたこの構成は、彼の音色やフレーズ運びをよりダイレクトにリスナーに伝える役割を果たしています。

レコーディングの背景とサイドマン

このセッションに参加したピアニストのレイ・サンティシとドラマーのジム・ジターノは、本作に先立つ1955年12月、アルバム『バーズ・アイ・ヴュー』録音のためマサチューセッツ州を訪れていたバードと初めて顔を合わせました。その際の共演を通じて、バードは彼らの才能を認め、自身の推薦により、本作のサイドマンとして迎えることになりました。ベースにはダグ・ワトキンスが加わり、安定したリズム・セクションを形成しています。

音楽性と評価

アルバム全体を通して、バードの演奏は控えめでありながらも深い情感を湛えています。評論家トム・ジュレクはオールミュージック誌上にて、本作に5点満点中3点の評価を与えています。彼のレビューによれば、バードは短いフレーズやソロにおいても大げさな表現を避けており、リズム・セクションも同様に、決して単純ではないものの抑制の効いた演奏を展開しています。また、バードの音色は後年の録音と比較するとやや鋭さに欠けるものの、ソロイストとしての個性である魂のこもった響きは、この作品にもしっかりと宿っていると評されています。本作は、バードの初期のスタイル、特にワン・ホーン編成における表現力を知る上で貴重な記録と言えるでしょう。

収録曲

以下の6曲が収録されています。

リトル・ロック・ゲッタウェイ - "Little Rock Getaway" (作曲: Joe Sullivan) - 7:07
ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス - "Polka Dots and Moonbeams" (作曲: Johnny Burke, Jimmy Van Heusen) - 7:24
ピープル・ウィル・セイ・ウィア・イン・ラヴ - "People Will Say We're in Love" (作曲: Oscar Hammerstein II, Richard Rodgers) - 3:42
イフ・アイ・ラヴ・アゲイン - "If I Love Again" (作曲: Jack Murray, Ben Oakland) - 4:43
ホワッツ・ニュー - "What's New" (作曲: J. Burke, Bob Haggart) - 5:05
星影のステラ - "Stella by Starlight" (作曲: Ned Washington, Victor Young) - 3:43

参加ミュージシャン

ドナルド・バード - トランペット
レイ・サンティシ - ピアノ
ダグ・ワトキンス - ベース
ジム・ジターノ - ドラムス

このアルバムは、ドナルド・バードの多岐にわたるディスコグラフィーの中でも、その編成のユニークさから特別な光を放っており、彼の初期の音楽性を深く掘り下げたいファンにとっては必聴の一枚と言えるでしょう。

外部リンク

* バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル - Discogs (発売一覧)

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