バーナード・ベイリン

バーナード・ベイリン：アメリカ史の泰斗

バーナード・ベイリン（1922年9月9日 - 2020年8月7日）は、アメリカ合衆国の歴史学者であり、ハーバード大学の名誉教授でした。彼の専門はアメリカ史であり、特に植民地時代からアメリカ独立革命までの時代に焦点を当てていました。ベイリンは、その卓越した研究業績により、ピューリッツァー賞（歴史部門）を1968年と1987年の二度受賞しています。また、1968年にはバンクロフト賞、1975年には全米図書賞も受賞しています。

生涯

ベイリンはコネチカット州ハートフォードで生まれました。ウィリアムズ大学を卒業後、1953年にハーバード大学で博士号を取得しました。1961年からハーバード大学の教授を務め、1993年に名誉教授となりました。

2020年8月7日、ベイリンはマサチューセッツ州ベルモントの自宅で心不全により97歳で亡くなりました。

業績と影響

ベイリンの研究は、アメリカ史における思想史、社会史、政治史の融合を特徴としています。彼の著作は、アメリカ独立革命の思想的背景や、植民地時代の社会構造、大西洋世界における文化交流など、多岐にわたるテーマを扱っています。

特に、ピューリッツァー賞を受賞した『アメリカ革命のイデオロギー的起源』（The Ideological Origins of the American Revolution, 1967年）は、アメリカ独立革命を思想史の観点から分析した画期的な著作として高く評価されています。この本では、革命期のパンフレットや文書を詳細に分析し、革命家たちの思想的基盤を明らかにしました。

また、『大西洋世界』（Atlantic History）の概念を提唱し、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸を結ぶ大西洋を舞台とした歴史研究の重要性を強調しました。この概念は、グローバルな視点から歴史を捉える新たなアプローチとして、多くの研究者に影響を与えています。

主要著作

The New England merchants in the seventeenth century, Harvard University Press, 1955.
Education in the forming of American society: needs and opportunities for study, University of North Carolina Press, 1960.
Political experience and enlightenment: ideas in eighteenth-century America, Bobbs-Merrill, 1962.
The ideological origins of the American Revolution, Belknap Press of Harvard University Press, 1967.
The origins of American politics, Knopf, 1968.
『アメリカ政治の起源』、田中和か子訳、東京大学出版会、1975年
The ordeal of Thomas Hutchinson, Belknap Press of Harvard University Press, 1974.
The peopling of British North America: an introduction, Random House, 1986.
Voyagers to the West: a passage in the peopling of America on the eve of the Revolution, Knopf, 1986.
Faces of revolution: personalities and themes in the struggle for American independence, Knopf, 1990.
To begin the world anew: the genius and ambiguities of the American founders, A. Knopf, 2003.
『世界を新たに――フランクリンとジェファソン: アメリカ建国者の才覚と曖昧さ』、大西直樹・大野ロベルト訳、彩流社、2011年
Atlantic history: concept and contours, Harvard University Press, 2005.
『アトランティック・ヒストリー』、和田光弘・森丈夫訳、名古屋大学出版会、2007年


バーナード・ベイリンは、その卓越した研究と教育活動を通じて、アメリカ史研究に多大な貢献をしました。彼の著作は、今もなお多くの研究者や学生に読み継がれ、アメリカ史研究の基礎となっています。

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