バーニャカヴァッロの聖母

『バーニャカヴァッロの聖母』

『バーニャカヴァッロの聖母』（伊: Madonna di Bagnacavallo、英: Bagnacavallo Madonna）は、1495年にドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーによって描かれた板上の油彩画です。この作品は、『パトロチーニオの聖母』（伊: Madonna del Patrocinio）とも呼ばれています。

発見と認定

第二次世界大戦後、イタリアのラヴェンナ県バーニャカヴァッロのカプチン会女子修道院で発見されました。1961年、イタリアの美術史家ロベルト・ロンギによってデューラーの作品と認定され、数年後、パルマ県トラヴェルセートロのマニャーニ・ロッカ財団に収蔵されました。

背景

デューラーの宗教画において、聖母、特に「聖母子」は最も頻繁に取り上げられた主題の一つです。この背景には、中世以来強まってきた聖母信仰と、画家個人の聖母への傾倒があったと考えられます。デューラーが描いた聖母子の油彩画は、祭壇画を除くと約15点が現存しており、そのうち10点は聖母マリアと幼児イエス・キリストのみを描いた聖母子画です。また、版画では約25作品、素描では約70作品の聖母子画が知られています。これらの作品はデューラーの全生涯にわたって制作されましたが、油彩画、版画、素描ともに1510年代に多く見られます。版画の最後の作例は1520年であり、油彩画も1520年代には『梨の実の聖母』（ウフィツィ美術館）1点のみが知られています。これは宗教改革の影響によるものと考えられています。

作品概要

『バーニャカヴァッロの聖母』は、デューラーが1505年の2回目のイタリア旅行に際し、ドイツから持ち込んだ作品の一つで、売却して旅費を賄ったと考えられています。この作品は、ロレンツォ・ディ・クレディによる『幼子イエス』（おそらくヴェネツィアでデューラーが見た）を模倣したとも言われ、1495年の準備素描が知られています。聖母マリアの表情は、ジョヴァンニ・ベッリーニの作品に似ており、『ハラーの聖母』（ワシントン・ナショナル・ギャラリー）など、同時期のデューラーの作品にも共通の特徴が見られます。

作品の詳細

場面は暗い部屋の中に設定されており、左側には木の板で閉じられた窓、右側には壁に囲まれた場所に続くアーチ（hortus conclusus [閉ざされた庭] の象徴）が描かれています。聖母マリアは、幼子イエスを膝に乗せた半身像で表されています。イエスの左手は母親の手に触れており、もう一方の手には「三位一体」の象徴的な植物であるイチゴの小枝を持っています。イチゴの枝には、本来3枚あるはずの葉のうち2枚しかありません。この欠けている葉は、「三位一体」の最後の人物であるイエスを示唆していると考えられます。

デューラーの聖母子像

デューラーは生涯にわたり、聖母子を様々な形で描きました。油彩、版画、素描など多岐にわたる表現で、聖母子への深い信仰と芸術的な探求を示しました。特に1510年代には、多くの聖母子像が制作され、彼の作品の中でも重要な位置を占めています。

脚注

出典

Costantino Porcu, ed (2004). Dürer. Milan: Rizzoli

外部リンク

マニャーニ・ロッカ財団の本作のサイト (イタリア語) [2]

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