バーバラ寺岡

料理研究家として広く知られるバーバラ寺岡（本名：寺岡 たみ子）は、1945年3月に生を受け、2017年6月2日に72歳で亡くなりました。

彼女の個性的な名前である「バーバラ」は、ハンガリー語の「ボルバーラ」を英語風に発音したもので、これは祖母の名前に由来しています。料理家として活動を始めるにあたり、姓名判断の結果に基づいてこの名前を選んだとされています。

白百合学園を卒業した彼女の生い立ちは、波乱に富んだものでした。第二次世界大戦中の1945年、ハンガリーの首都ブダペストで誕生。父は当時の日本公使、寺岡洪平氏、母はハンガリー人の美顔術師、ユーハース・エリザベス氏という国際的な家庭に育ちました。しかし、彼女が生後間もない頃、父はソビエトでの抑留を経て終戦直前に日本へ強制帰国させられ、母と幼い娘はブダペストに取り残されることとなります。この父との離別期間は長く、母子は困難な時代を過ごしました。戦後、外交官として活動を再開した父は、1952年に西ドイツのボンへ臨時代理大使として赴任。翌年の1953年11月、父が一時日本へ帰国する機会に合わせ、母子はハンガリーを出国。ウィーンで約9年ぶりに父娘の再会を果たし、共に日本へ帰国しました。しかし、父洪平氏は帰国後わずか数年、1960年に40歳という若さで逝去しています。

料理研究家としてのキャリアは、1966年に刊行した著書『デザートとお菓子』から本格的にスタートしました。特に、1970年には当時まだ日本に登場して間もない電子レンジを使った画期的な調理法を初めて紹介し、その普及に貢献しました。これは、現代の時短料理の先駆けとも言えるでしょう。また、1980年代に膠原病を患った経験も、彼女の活動に新たな広がりをもたらしました。中国の伝統的な薬膳料理に関心を寄せ、その実践によって病状を克服。この経験は、健康と食を結びつける独自の研究へと繋がりました。

バーバラ寺岡氏の活躍は、料理分野に留まりませんでした。食や健康の専門家としてだけでなく、幅広い教養と知見を活かし、文化、環境問題、さらには安全保障に関わる自衛隊の活動など、多様なテーマで評論活動を展開しました。また、生活用品の開発プロデュースを手がけるなど、多方面でその才覚を発揮し、ユニークな視点を持つ文化人としても注目されました。

彼女の親族には、海軍少将の寺岡平吾氏（祖父）や、山脇正勝氏（曾祖父）といった歴史に名を残す人物がいます。

料理や健康に関する数多くの著作を世に送り出す傍ら、テレビドラマ『連続テレビ小説 ハイカラさん』にメリーさん役で出演するなど、メディアへの登場機会もありました。しかし、2017年6月2日、腹膜がんのため72歳で永眠しました。

主な著作

『デザート・お菓子』（婦人画報社、1968年）
『おいしいホームフリーズクッキング』（大門出版、1970年）
『1日6回食べて魅力的にやせる本』（講談社、1975年）
『医学的ブスにならない本』（角川文庫、1985年）
『自然があなたを殺してる 汚染時代の健康・美容のサバイバル術』（角川文庫、1989年）
『食い改めの時代 「41歳寿命説」を吹き飛ばす 毒が入ってもだせばいい健康法』（徳間ブックス、1990年）
『死を招く食生活 アメリカのたたりin Japan ガン・糖尿病にかからないための心臓・免疫系強化読本』（徳間ブックス、1992年）
『バーバラ寺岡のおとぎ話に学ぶ和の活力食』（講談社、2006年）

※上記は代表的な単独著作の一部です。

主な出演

* 連続テレビ小説 ハイカラさん（NHK、1982年）- メリーさん 役

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