寺岡平吾

寺岡 平吾（てらおか へいご）

日本の海軍軍人として、明治、大正、昭和の三代を生きた寺岡平吾は、1877年（明治10年）7月7日に山形県で生を受けました。父は村会議員を務めた寺岡儀一で、その五男として育ちました。荘内中学校での学びを経て、海軍の道を志し、1899年（明治32年）12月、海軍兵学校の第27期生として卒業しました。そして、1901年（明治34年）1月には海軍少尉に任官し、その軍歴の第一歩を踏み出しました。

海軍での歩み

若き士官となった寺岡は、日本の将来を左右する日露戦争に身を投じました。この戦役では第1艇隊の艇長として出征し、最前線での貴重な経験を積みました。

戦後もそのキャリアは順調に進みました。1905年（明治38年）9月には戦艦「扶桑」の水雷長を務め、その後も海軍兵学校で教官として後進の指導にあたるなど、教育の分野にも関わりました。また、「厳島」や「常磐」といった艦の水雷長、軍令部への出仕など、多様な職務を経験し、海軍組織の様々な側面を学びました。

彼のキャリアにおいて特筆すべきは、1910年（明治43年）3月に当時の連合艦隊司令長官、東郷平八郎大将付副官に就任したことです。国家的な英雄である東郷大将の側近として勤務した経験は、彼にとって大きな財産となったことでしょう。翌年には巡洋戦艦「鞍馬」の分隊長を務め、その後も横須賀予備艦隊の副官、海軍省の人事局員、そして巡洋戦艦「比叡」の副長など、引き続き重要なポストを歴任しました。

艦長職と昇進

1916年（大正5年）12月には、運送船「青島」の指揮官を拝命しました。その後、要港部である鎮海の参謀長を経て、1918年（大正7年）12月に海軍大佐へと昇進しました。これにより、部隊を指揮する責任ある立場となっていきます。

大佐昇進後の1919年（大正8年）5月、「平戸」艦長に着任したのを皮切りに、その後も「春日」「鞍馬」「霧島」といった巡洋艦や巡洋戦艦、さらに当時最新鋭の戦艦であった「陸奥」など、数々の主要艦の艦長を歴任しました。これらの経験を通じて、大型艦を率いる指揮官としての手腕を遺憾なく発揮しました。

将官として、そして予備役へ

順調に階級を重ね、1923年（大正12年）12月には海軍少将に進級しました。将官となった後も、横須賀鎮守府の参謀長や第3戦隊司令官といった要職を務め、海軍の組織運営や部隊指揮において重要な役割を果たしました。しかし、1926年（大正15年）9月に待命となり、翌1927年（昭和2年）4月には予備役に編入されることとなりました。これにより、現役の軍人としてのキャリアに区切りをつけました。

第二次世界大戦終結後の1947年（昭和22年）11月28日には、公職追放の仮指定を受けています。

栄典と晩年

寺岡平吾はその生涯を通じて、数多くの栄典に浴しました。少尉任官時の正八位から始まり、最終的には従四位まで位階を昇進させました。また、功五級金鵄勲章や勲二等瑞宝章、勲三等旭日中綬章など、様々な勲章や記章を授与され、その功績が認められました。

特筆すべきはその長寿です。1977年（昭和52年）7月25日、満100歳を迎えた直後にその生涯を閉じました。明治から昭和まで、日本の激動期を生き抜いた海軍軍人として、また百歳という稀有な長寿を全うした人物として、その名は記憶されるでしょう。

親族

寺岡平吾は、山脇正勝の娘である勝子を妻に迎えました。長男の寺岡洪平は外交官として活躍し、甥にあたる寺岡謹平も海軍中将を務めるなど、親族にも高官や各界の著名人がいます。また、孫には食・衣・東洋西洋和文化研究家として知られるバーバラ寺岡がいます。

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