バーバ・ヤーガ

バーバ・ヤーガ：東欧の謎めいた魔女

バーバ・ヤーガは、東スラヴの民話に多く登場する伝説的な魔女です。森の中に住み、鶏の足つきの小屋を住処とする彼女は、子供を誘拐して食べると恐れられています。しかし、一方で主人公を助ける存在として描かれる物語もあり、その姿は一様ではありません。

恐ろしい魔女の姿

多くの民話では、バーバ・ヤーガは邪悪な存在として描かれています。骨と皮ばかりの痩せこけた老婆の姿で、むき出しの骨の脚で不気味に動き回ります。彼女の小屋は骸骨で飾られ、不気味な雰囲気に満ち溢れています。移動手段は臼と杵。杵で臼を叩きながら、ほうきで移動跡を消しながら森の中を滑るように進んでいきます。

典型的な物語では、バーバ・ヤーガは子供を誘拐し、食べようとします。そのため、彼女に遭遇することは大きな危険を伴います。主人公が彼女の助けを借りようとする物語も存在しますが、その過程は試練と危険に満ちたものとして描かれることが多く、安易に近づくことはできない存在として描かれています。

意外な一面：助ける魔女

一方で、バーバ・ヤーガが主人公を助ける物語も存在します。これらの物語では、主人公の礼儀正しさや誠実さ、純粋な心が試されます。主人公がこれらの資質を示すことで、バーバ・ヤーガは協力者となり、魔法のアイテムや助言を与え、困難を乗り越える手助けをしてくれます。

中には、三人のバーバ・ヤーガが登場する物語もあります。これらの物語に登場するバーバ・ヤーガは、しばしば慈悲深く、主人公に適切な助言を与えたり、不思議な贈り物をするなど、善意を示す存在として描かれる傾向があります。

バーバ・ヤーガの起源と歴史

バーバ・ヤーガの起源は、スラヴ[[神話]]における冬の女神や自然の力の象徴とする説があります。キリスト教の普及に伴い、古来の神々はキリスト教の聖人や悪魔、妖怪などに置き換えられ、冬の厳しい自然を体現する存在として、バーバ・ヤーガが誕生したと考えられています。また、サーミ人の高床倉庫が、バーバ・ヤーガの住む「鶏の足の上の小屋」のモチーフに影響を与えたという説もあります。

記録に残る最古の記述は、1755年のミハイル・ロモノーソフの著書『ロシア文法』です。その後、17世紀以降の木版画や、ロシアの民話、おとぎ話の本に定期的に登場するようになり、広く知られる存在となりました。

代表的な民話

バーバ・ヤーガが登場する代表的な民話には、以下のものがあります。

『鷹フィニストの羽根』
『うるわしのワシリーサ』
『竜王と賢女ワシリーサ』
『蛙の王女』
『鵞鳥白鳥』
『ダニーラ・ゴヴォリーラ王』

これらの民話を通して、バーバ・ヤーガは単なる悪役ではなく、複雑で多様な側面を持つ、魅力的な伝説的存在として生き続けています。その正体は依然として謎に包まれていますが、古くから人々の想像力を掻き立て、語り継がれてきた存在であることは間違いありません。

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