杵

杵（きね）について

杵（きね）とは、主に穀物の脱穀や籾すり、また餅つきに使用される伝統的な道具です。この道具は古くから日本で使われており、形状や使用方法も地域により多様性があります。

杵の種類と形状

杵は主に竪杵（たてぎね）と横杵（よこぎね）の2種類に分類されます。

竪杵（たてぎね）

竪杵は棒状の形をしており、先が太くなっています。歴史的には非常に古くから存在し、手杵（てぎね）や兎杵（うさぎきね）などと呼ばれてきました。当初は長い棒であり、後に握りやすいように中間部分が細く加工され、両端が太くなることで打撃力が向上しました。この形状は、多くの地域で現在も使用されています。例えば、大阪府の水間寺や奈良県、三重県の伊賀地方では、この千本杵を用いて餅つきを行っています。

横杵（よこぎね）

横杵は、杵本体と柄が垂直に交わる形を持ち、一般には打杵（うちぎね）とも呼ばれています。江戸時代に普及したと思われがちですが、広島県の草戸千軒町遺跡では室町時代前半のものが見つかっており、実際には14世紀から16世紀には使用されていたと考えられています。江戸期には臥杵（ふじきね）とも称されました。

その他の仕様

また、杵には手で扱うものだけでなく、水車小屋に据え付けられるタイプや、加工機械の一部として使われるものも存在します。
歴史的には、様々な素材が用いられており、特にカシやヒノキが一般的に使われています。仏教においては、金剛杵という法具にもこの「杵」の字が使われていますが、金剛杵は武器としての役割を持っています。

杵の用途

杵は主に穀物の脱穀や籾すりに利用されています。脱穀作業では、穀物の穂を臼に入れ、その上から杵で打つことで穀物が摩擦され、脱穀が行われます。籾すりも同様に行われ、籾を臼に入れ、杵で打つことで籾摺りが進行します。近年では水車を動力として利用した米搗き装置が開発され、自動化が進んでいます。
また、杵は餅つきに用いられることで有名です。日本では弥生時代から使われており、現代では脱穀やもみすりよりも餅つきの道具として親しまれています。石臼が普及する以前は、粉を作る作業も杵が使われており、精白された穀物を粉砕して粉末状にしていました。

中国における杵

中国でも、広西チワン族自治区のチワン族や福建省のシェ族などが独自の杵を用いて餅つきを行う文化があります。彼らは「粑槌」と呼ばれる千本杵と、「粑槽」と呼ばれる特別な臼を使用しています。湖北省や湖南省、貴州省の人々は横杵を使用する伝統を残しており、中国の横杵は日本のものよりも細長いことが一般的です。

地域や方言による表現

杵には多くの地域方言名があります。例えば、鹿児島県与論島では「あーじん」、沖縄県先島諸島では「いなつき」と呼ばれています。他にも、山形県や秋田県では「うちぎ」、香川県では「かけや」が使われるなど、地域ごとに異なる呼び名が存在します。また、アイヌ語では、杵を「イウタニ」と呼びます。特に、日本語の方言で「きね」が「擂り粉木」などの意味で使われることもあり、時には頑固者や馬鹿者を指す隠喩としても用いられています。

まとめ

杵は、その多様な形状や用途から、文化的にも歴史的にも重要な役割を果たしてきました。日本や中国など、地域によって異なる使い方や呼称が存在し、今なお多くの人々に愛用されています。

もう一度検索