バームブラック

バームブラック：アイルランドのハロウィン伝統パン

バームブラック（barmbrack、またはbarnbrack）は、アイルランドでハロウィンの時期に食べられる伝統的なパン、またはケーキです。アイルランド語では「バイリン・ブラク（báirín breac）」と呼ばれます。このパンは、ドライフルーツをたっぷり使用した濃厚な風味が特徴で、長い歴史を持っています。

起源と歴史

バームブラックの起源は、古代ケルトの時代に遡ります。11月1日に冬の始まりを祝うサウィン（サオィン、サワーン、サーウィン、サウィーン、サーオィン、サムハイン）という祭りが行われていました。キリスト教の普及に伴い、この祭りは前夜祭としてハロウィンに変化し、現在に至っています。アイルランドでは、この日にカブをくり抜いてランタンを作り、バームブラックを焼く習慣があります。

「バーム」という言葉は、古代英語の「ベオルマ（beorma）」に由来し、パン生地を発酵させるための酒を意味します。「ブラック（brac）」はアイルランド語で「小さな斑点のある」という意味で、ドライフルーツや砂糖漬けの果皮がパン生地に散りばめられた様子を表しています。

ハロウィンの食卓と占い

ハロウィンの夜には、子供たちが魔女や幽霊の仮装をして家々を回り、お菓子やナッツをもらう習慣があります。お楽しみが終わると、コルカノンと呼ばれるジャガイモ料理が振る舞われ、その後にバームブラックが登場します。バームブラックは単なるデザートではなく、占いにも使われる特別なパンです。

パンの中には、様々なアイテムが隠されており、それらを当てた人は、その後の1年間の運勢を占うことができるとされています。

バームブラックに隠された占いアイテム

バームブラックによく入れられるアイテムと、その意味は以下の通りです。

指輪：結婚を意味します。
硬貨：金運上昇を意味します。
布切れ：貧困を意味します。
ボタン：独身男性が結婚できない、または戦争関連の問題を意味します。
エンドウ豆または指貫：独身女性が結婚できないことを意味します。
木の破片: 結婚生活に良くないことが起きることを意味します。

硬貨、布切れ、指輪は必ず入れるとされていますが、大人数で占う場合は、ボタンや指貫なども加えられます。ただし、これらのアイテムは、のどに詰まらせる危険性があるため、注意が必要です。特に家庭で占いを行う場合は、事前に参加者に注意を促し、食べる前に取り出すようにしましょう。

文学作品におけるバームブラック

ジェイムズ・ジョイスの短編集『ダブリン市民』の一編「土くれ」には、ハロウィンの日に、主人公のマライアが洗濯店でお茶の時間にバームブラックを切り分ける場面が描かれています。この描写からも、バームブラックがアイルランドの人々にとって、身近な存在であることがわかります。

バームブラックの広がり

現在では、アイルランドだけでなく、他の国々でもバームブラックが知られるようになり、ハロウィンの時期には多くの場所で楽しむことができます。その濃厚な風味と、占いの要素が、人々に愛される理由でしょう。

関連情報

バームブラックは、アイルランド料理の代表的なもののひとつです。また、占い付きの食べ物としては、ガレット・デ・ロワやフォーチュンクッキーなどがあります。

バームブラックは、アイルランドの文化と伝統を伝える、特別な食べ物と言えるでしょう。

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