バーラーコート空爆

バーラーコート空爆

2019年2月26日に発生したバーラーコート空爆は、インドが隣国パキスタンの領空を越えて実行した軍事作戦です。この空爆は、インド空軍がイスラム過激派組織の拠点を標的として実施したもので、インドにとっては1971年の第三次印パ戦争以降、約48年ぶりとなるパキスタンへの越境攻撃として歴史的な意味合いを持ちます。

背景

この空爆に先行する出来事として、同年2月14日にインドのジャンムー・カシミール州プルワマ県で起きた自爆テロが挙げられます。幹線道路を走行中の治安部隊のバスに対し、爆発物を積んだ車両が突入し、多数の死傷者を出しました。この襲撃事件について、イスラム過激派組織「ジャイシュ＝エ＝ムハンマド」（JeM）が犯行声明を発出しました。パキスタン政府は、このテロ行為の残虐性を非難しましたが、事件への自国の関与については一切否定する姿勢を示しました。

バーラーコート空爆は、2019年中に予定されていたインド総選挙を控えた時期に実行されました。このため、パキスタンの当時の首相は、インド政府が国内の政治的な目的、具体的には総選挙に向けてパキスタンを攻撃したのではないかとの見解を表明しました。これに対し、インド政府はそのような主張を否定し、空爆はテロに対する正当な措置であると説明しました。

空爆の経過

2019年2月26日当日、パキスタン軍は当初、インドの戦闘機が国境付近のバーラーコートに近い、人が住んでいない丘陵地帯に爆弾を投下したとの情報を発表しました。

その後、インド政府は空爆が実施されたことを正式に認め、インド空軍がプルワマでのテロ攻撃に対する報復としてこの作戦を実行したと発表しました。さらにインド側は、今回の空爆はパキスタン国内に存在するジャイシュ＝エ＝ムハンマドの施設を狙ったものであり、軍事目標ではなくテロ組織を対象とした「非軍事」かつ、差し迫った脅威を取り除くための「先制的」な行動であったと説明しました。この作戦により、インド空軍の戦闘機が1971年の戦争以来初めて、パキスタンとの国境線（管理ライン）を越えることとなりました。

翌日の2月27日には、パキスタン空軍が反撃に出たことを発表しました。パキスタン軍の航空機、JF-17がインド空軍のMiG-21およびSu-30MKI戦闘機を撃墜し、インド軍パイロット1名の身柄を拘束したと主張しました。これにより、両国間の緊張は一層高まることとなりました。

この一連の出来事は、南アジア地域における印パ両国の長年にわたる対立の根深さを改めて浮き彫りにするとともに、テロ組織を巡る問題が軍事的な衝突に発展しうる現実を示しました。

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