国教
国教についての概説
国教とは、国家が法的かつ公式に保護し、その活動を支援する宗教のことを指します。国教の指定には、国家元首の信仰や国内の信者数を考慮する理由が含まれます。現代の国教は多くの場合、一神教で見られます。
国教が設定された場合、その教義が国家の重要な原則となり、国家行事として宗教的儀式が行われる場合、その国は「宗教国家」と呼ばれます。たとえば、後期ローマ帝国におけるキリスト教や、イスラム国家でのイスラム教がそうした例です。これは「世俗国家」と対比される概念ですが、現代においても世俗主義を採る国でも宗教が公的に高い地位を持つ場合があり、その例も補足的であると言えます。
政教分離と国教
多くの近代国家では、憲法において政教分離を保障し、政治と宗教の関係を分けています。具体的には、信教の自由が認められ、政府が宗教団体に対して特別な扱いをすることはないことが原則です。しかし、歴史的な背景から国教を維持している国もあり、こうしたケースには「国[[教会]]」のように、特定の宗派にのみ政府の保護や支援が行われるものもあります。
イタリアはかつてカトリックを国教としていましたが、1985年には政教条約（コンコルダート）に移行しました。これにより、政府と教会の間でより明確な関係が築かれることになりました。似たような方式を採る国には、ドイツがあります。また、政府が優勢な宗教を尊重する国として、スイス、ベルギー、フランス、ブラジルなどが例として挙げられます。
他方で、アメリカ合衆国やオーストラリア、日本のように完全に政教分離を実施している国も存在し、これらの国では特定の宗教に対して政府が際立って関与することはありません。日本では仏教や神道が広く信仰されていますが、これらは日本の国教とはされていません。
各国の国教
国教の存在する国々には、特定の宗教の公式な地位が認められています。具体的には、以下のような宗教が国教とされることがあります。
かつて国教を定めた国
日本の歴史において、神道が国教とされた時期がありました。明治初期に試みられた神道国教化政策は失敗に終わりましたが、その後も「神道は宗教ではなく道徳である」とする考えが広がりました。このような背景は、「国家神道」の歴史を考察する上で重要です。平凡社の『世界大百科事典』や小学館の『日本大百科全書』では、国家神道が「一種の国教制度」として解釈されています。
見えざる国教
アメリカ合衆国は表向きは政教分離を規定していますが、ロバート・ニーリー・ベラーによれば、多数派による「市民宗教」が確立しているとされています。また、森孝一はキリスト教と啓蒙思想が融合した「見えざる国教」を指摘しています。さらに、タイでは仏教の国として知られていますが、実際には明確に国教として定義されているわけではありません。
まとめ
国教には各国の文化や歴史が色濃く反映されており、政教の分離や優勢な宗教の扱いは国によって異なります。国家の宗教的立場を理解することで、その国の政治的、社会的背景をより深く理解する手助けとなります。
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