バーンデン・パークの惨事

バーンデン・パークの惨事

バーンデン・パークの惨事は、1946年3月9日にイングランド北西部のボルトンで起こった悲劇的な事故です。FAカップ6回戦の第2戦、ボルトン・ワンダラーズFC対ストーク・シティFCの試合中に発生したこの事故により、33人が命を落とし、およそ500人以上が負傷しました。この事故は当時のイギリススポーツ史における最大の惨事の一つとされています。

背景

イギリスでは、第二次世界大戦前からサッカーの観客数が急増しており、スタジアムの収容能力を超える観客が集まることが常態化していました。入場制限が設けられていても、多くの人々が強引な手段で観客席に侵入しており、安全性への配慮がほとんどなされていない時代でした。

1923年に発生したウェンブリー・スタジアムでの事件では、ピッチ上に12万7千人が押し寄せる中、1千人以上が負傷するという事故がありました。この頃から、観客の安全性が問題視されるようになったものの、実際の対策は不十分なままでした。

戦争の影響で、サッカーの試合数が減少していましたが、戦後、観客は再びスタジアムに足を運ぶようになり、ボルトン・ワンダラーズの試合にも多くの人が集まりました。

経緯

1946年3月2日に行われた第1戦でボルトンが勝利し、第2戦に期待が高まる中、スタジアムで試合が行われることになりました。バーンデン・パークは7万人を超える収容が可能でしたが、試合当日の観客数は推定85,000人に達していました。この過密状態が事故の原因となったのです。

試合開始が近づく中、北側のゴール裏立見席「レイルウェイ・エンド」に集まる観客は動けない状況にあり、一方でスタジアムの外にはまだ多くの人々が入場を希望していました。連絡体制が整っていなかったため、現場の混雑状況を適切に把握することができず、場内の警備も乱れるばかりでした。

試合が始まった後、12分経過した時点で、群集の圧力によってスタンドが崩れ、観客が押し出される形で事故が発生しました。これにより33人が亡くなり、500人以上が重軽傷を負うという結果となりました。この惨事を受けて、試合は中断され、選手たちは控え室に退去。救助活動が行われましたが、事態は深刻でした。

事故後の対応

事故後、イギリス政府は調査委員会を設立し、様々な改善策が提案されましたが、戦後の再建が優先されたため、実行には移されませんでした。数十年後、スタジアムの安全性は僅かに改善されましたが、依然として観客数の多さやフーリガニズムの影響で問題は続いていました。

1975年にはスポーツ競技場安全法が制定され、事故再発防止に向けた規制が強化される過程へと進みました。バーンデン・パークの惨事は、観客の安全・安心な観戦環境の重要性を改めて考えさせるものであり、以降のサッカー界における安全基準の見直しを促す契機となったのです。

この事故がもたらした教訓は、現在でも多くの人々に影響を与えており、安全が確保された環境でのスポーツ観戦が大切であることを忘れてはなりません。

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