パイオニア5号

パイオニア5号：惑星間空間の先駆者

パイオニア5号は、アメリカ航空宇宙局（NASA）がパイオニア計画の一環として打ち上げた惑星探査機です。1960年3月11日にケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、地球と金星の軌道間を周回し、惑星間空間の調査を目的としました。この探査機は、パイオニア計画の中でも特に成功を収めたミッションとして知られています。

機体と搭載機器

パイオニア5号は、直径0.66メートルの球体で、4枚の太陽電池パネルが幅1.4メートルにわたって展開される設計でした。探査機の質量は43kgと軽量で、以下の4つの科学観測機器が搭載されていました。

1. 3軸一致無指向性比例係数望遠鏡: 太陽エネルギー粒子線を検出し、地球に捕獲された放射線を観測しました。具体的には、75MeVを超える光子や13MeVを超える電子を検出することができました。
2. 磁気センサー: 地磁気の境界付近や惑星間空間の磁場を測定しました。測定範囲は1マイクロガウスから12ミリガウスで、1つのコイルが探査機のスピン軸に垂直な磁場を測定するように配置されていました。測定結果はアナログ形式とデジタル形式の両方で出力されました。
3. 電離箱とガイガー＝ミュラー計数管: 宇宙線を測定するために使用されました。これらの機器は、探査機のスピン軸に対して垂直に取り付けられていました。
4. 流星塵運動量分光計: 2つの振動板とマイクロフォンで構成されており、流星塵粒子を検出し、その運動量を測定するために用いられました。

ミッションの成果

パイオニア5号は、磁気センサーで測定した惑星間磁場のデータを地球に送信しました。その結果、惑星間磁場の平均値が約5γ（ガンマ）であることが確認されました。また、太陽フレアによる粒子の放出や宇宙線放射の観測も行われました。

しかし、流星塵検出器はデータシステムの飽和により運用できませんでした。それでも、パイオニア5号は、惑星間空間の磁場を直接測定した最初の探査機の1つとして、重要な役割を果たしました。これにより、それまで推測の域を出なかった惑星間空間の物理的性質が明らかになり、宇宙環境の研究に大きな貢献をしました。

データ伝送と運用

記録されたデジタルデータは、探査機と地球の距離、および使用されるアンテナのサイズに応じて、1、8、または64ビット/秒の速度で送信されました。太陽電池の重量制限のため、遠隔送信機を連続して運用することは困難でした。そのため、1日に4回、各25分間の運用が計画され、特別な目的がある場合には延長が許可されることもありました。総運用時間は138.9時間に及び、3MBを超えるデータが受信されました。

データの大部分は、ジョドレルバンク天文台のラヴェル望遠鏡とカエナ・ポイント衛星追跡ステーションで受信されました。データ受信は1960年4月30日まで行われましたが、それ以降は信号が弱くなり、ノイズに紛れて受信できなくなりました。1960年6月26日には、最遠となる360万km離れた探査機からの信号がジョドレルバンク天文台で受信されましたが、この頃には信号が微弱すぎてデータ取得は不可能でした。

ミッションの意義

パイオニア5号は、惑星間空間の探査における先駆者としての役割を果たしました。その成功は、後の惑星探査ミッションに大きな影響を与えました。特に、惑星間磁場の存在を確認したことは、太陽風と磁場の相互作用の研究を大きく進展させるきっかけとなりました。

この探査機のデータは、太陽系物理学の分野に重要な貢献をし、人類の宇宙探査の歴史にその名を刻んでいます。

参考資料

NASA's Solar System Explorationによるパイオニア5号のプロファイル
Space Technology Laboratories Documents Archive
* Spaceflight誌のパイオニア5号ミッション45周年に関する記事（2005年）

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