流星塵

流星塵（りゅうせいじん）

宇宙空間に漂うごく小さな塵が、地球の大気圏に高速で突入する際に生じる強い熱によって溶け、再び冷え固まってできた、微細な球状粒子を「流星塵」と呼びます。英語ではmicrometeoriteやmicrometeoroidなどと称されます。流星や大きな火球が地上に隕石として落下することは稀ですが、たとえ小さな流星であっても完全に燃え尽きるわけではなく、目には見えないほどの微小な燃えかす、つまり流星塵を生成し、これらが絶えず地球に降り注いでいます。

観察によって確認される流星塵の多くは、直径が1マイクロメートルから30マイクロメートル程度の範囲に収まります。その中でも特に頻繁に見つかるのは、直径が10マイクロメートルから20マイクロメートルの大きさのものです。地球全体に年間どれくらいの量が降り注いでいるかの正確な値は不明ですが、試算では125トンから最大で20万トンに及ぶとも言われています。

流星塵の降下は一年中起こっていますが、地上での採集量には季節による変動が報告されています。特に9月頃に最も多く観測される傾向があります。これは、6月から8月にかけて散在流星が多く出現することや、流星塵の大きさや密度によって地表に落下するまでの時間が異なる（無風時で理論上10日から数ヶ月、大気の流れも影響）ため、時間差を伴って地上に観測される数に影響を与えていると考えられています。この傾向は、降下速度の速い10マイクロメートル以上の比較的大きな粒子で顕著です。それ以下の小さな粒子は、降下に数ヶ月から年単位の時間を要するため、年間を通して観測数が比較的平均化される傾向にあります。

なお、非常に大きな隕石が落下したり、広範囲に隕石が降り注ぐ「隕石雨」が発生したりする際、大気圏内の比較的低い高度（およそ20キロメートルから40キロメートル）で多量の流星塵が発生することがあります。この場合、その隕石の通過した航跡が地上から雲のように見えることがあり、これは特に「隕石雲」と呼ばれています。

採集方法

日本では、1951年に流星塵の簡単な採集方法が雑誌で紹介されて以来、アマチュア研究家の間で観測や研究が活発に行われるようになりました。アマチュアが行う主な採集方法には、以下の二通りがあります。どちらの方法も手間が比較的少なく、採集量や傾向に大きな違いはないとされています。

ガラス板法

この方法は、スライドガラスの表面に薄くグリセリンを塗り、これを屋外に約一日設置するというものです。大気中を漂い降下してきた流星塵がグリセリンの粘着面に付着するため、後で顕微鏡を使って観察することができます。観察する際は、事前に2×4cm程度の範囲をマーキングしておくと便利です。グリセリンは厚すぎると流星塵が沈んでしまい観察しにくくなるため、脱脂綿などで余分なグリセリンを丁寧に拭き取ることが重要です。ワセリンは流星塵の採集には適さないとされています。

雨水濾過法

適当な大きさ（例えば1m×2m程度）の板を用意し、雨が降った際にその板の上を流れた雨水を収集容器に集める方法です。流星塵には磁性を持つものが含まれるため、採集用の板や容器に鉄系の材料を使うのは避けた方が良いでしょう。雨の降り始めに合わせて板の表面を洗い流し、その後の雨水を集めます。集めた雨水を濾過し、濾紙の中央部を切り取って顕微鏡で観察します。

これらの他に、集めた雨水から磁石を使って流星塵を吸着する方法や、海底や湖底の泥、積もった雪や氷から採取して濾過する方法、ジェット機に特別な採集器を取り付けて成層圏の空気を集める方法、ロケットを使って特定の高度で粒子を捕集する方法など、より専門的・大規模な様々な採集や観測手法が存在します。

観察と分析

採集した粒子を観察する際は、まず光学顕微鏡を使用するのが一般的です。150倍から600倍程度の倍率で観察し、流星塵と思われる粒子の大きさや数を記録します。ただし、採集されるサンプルには多くのゴミが含まれており、特に球状の花粉や水泡といった他の粒子と見誤りやすい点に注意が必要です。

より詳細な観察や分析を行うためには、電子顕微鏡が用いられます。電子顕微鏡を使うことで、粒子の微細な形状を詳しく調べることができます。また、X線分光器などを用いて粒子に含まれる元素成分を分析することも重要です。成分分析を行うことで、その粒子が地球外から飛来した天然の流星塵なのか、それとも後述する人工起源の粒子なのかを判別しやすくなります。

人工流星塵

天然の流星塵とよく似た形状の粒子は、人間の産業活動、特に工業プロセスからも発生することが知られており、これらは「人工流星塵」と呼ばれています。例えば、工場の排煙や、電気溶接、グラインダー（研磨機）を使用する工程などから多く発生することが報告されています。そのため、地上で採集される流星塵のサンプルには、天然のものと人工のものが混ざっていると考えられます。

人工流星塵は、電子顕微鏡による詳細な観察や成分分析によって、天然の流星塵と区別することが可能です。しかし、光学顕微鏡で粒子の色や表面の滑らかさを見るだけでは、両者を判別することは難しいと言われています。実際に、ある調査で17個の流星塵候補についてX線分光器を使って成分分析を行ったところ、天然由来と人工由来の粒子がほぼ半々の数だったと報告されています。

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